006:暁雨、早朝に川原を散歩する(19)
自分も
「先生ぇ、これ落としてはりますよ、あーあーもう、何個
「あれ、皆さまお
「あのぅ……このヌイグルミはですね、動物園のお
じっと
「勝手にすみません。でもこれ可愛いですやろ。オオサンショウウオのほうは、僕が何とか止めましたんで」
あははと
「オオサンショウウオ?」
話好きな
すると
「へぇ、そないです。今、
苦笑いで言うて、
「そやけど、ユミちゃん様はえらいお気に入りやったようですよ、
にこやかに言う
なるほどなぁ。ほんまにいつも、よう気が
「その話、もうちょっとゆっくり聞こか」
私がにこやかに言うと、
「いやぁ、そんなん僕の口からはよう話せません。詳しいとこは、うちの先生からお聞きになってください」
とても無理やていう
腰は低い割に
主人を立てておるのです。
そんなよう出来た
「なんやなんや? 俺に何か聞きたいんかアキちゃん」
満面の笑みで茂が嬉しげにしゃしゃり出て来ました。
「なんでも聞いて、なんでも」
すっかり子供に戻ったような笑みで、
つい最近まで
そういうのは、ちゃあんと修行をして、
こいつはつくづく
けどまあ、それも手やったやろな。
そのお
「なんでも手伝うよ」
「別になんも手伝わんかてええんや。何か調べてきたんか、
やむなく
「たまたまやったのやけどな、ユミちゃんと動物園行ったら、
「山の
腕組みしたまま、
「
「なんでそんな話が動物園に落ちてんのや」
信用できひん気分で言うと、
それは動物園の地図やったんです。いわゆるパンフレットというもんです。
「ほら、ここに京都の森ていう、地元の生き物の展示場所ができてんのや。そこに
地図には私がほんまに若かった頃と、ほとんど変わらん京都動物園の敷地が色とりどりに描かれていますが、動物の
昔は散歩がてら、動物園に
思い出のある場所が変わり果てたんを見とうない気分が強うて、ユミちゃんに連れて行けと
しかし、そんな場所に解決の
よもや
「そいつも名のある化け
「あいにく名はない。今時の連中は山の化け
「お前がそれを
「いいや。全部、
「
あかん、あかん。こいつ今は他人やで。身内やないんや。
しかも、どこぞの社長か会長になったというのやさかい、
「まあええやんか、アキちゃん。この件、俺も混ぜてくれ。
なぜか
何やってんのやお前は、ええ歳して恥ずかしいと思わへんのか。
むしろこちらが恥ずかしく、目を
正体は
「可愛いやろ、これ。なあアキちゃん。動物園にこれの本物がおるんやで。また俺と一緒に絵描きに行こうな。なあ、アキちゃあん」
甘えた声で
あまり言いとうはないのですが、
あっちいけ茂!
「知らんわ、俺はそんな赤いタヌキなんか描きとうない」
断固として言いました。
「えぇ……でもこれタヌキやないんやでアキちゃん。レッサーなんとか言うんや。レッサー……なんやったかな。忘れたわぁ。気になるし見にいこうよ。アキちゃんかてもうずっと暇やんか?」
な? と
レッサー……? なんやそれ……。
知らん動物や……。気にな……る?
「レッサーパンダや、坊」
暗い穴の底から響いてくるような声が、座敷の隅から聞こえて来ました。
「え、レッサー……?」
思わず復唱して見上げると、座敷の隅で立ち上がっていた
白い衣装にも負けんほど、骨のように白い顔です。血が通ってるように見えへん。
あかん。何かが完全にあかん。
怒っていますが何にでしょうか?
まさか私が悪いんですか?
なぜなら
なんでや……?
「動物園に可愛いレッサーパンダでも描きにいかはったらどないです? 俺は仕事があるさかい、もう東京に戻らせてもらいますわ」
あ……っ、待っ……。
「そやそやレッサーパンダやわぁアキちゃん! さすが
満面の笑みで、茂が
「動物園で聞いたおもろい話、まだあるんやで。アキちゃん。向こうでゆっくり話そうか」
そう言うて、
おやまあ。それは聞かなしゃあないなあ。
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