006:暁雨、早朝に川原を散歩する(17)
やはり家族が一つ屋根の下にそろうというのは、ええものですね。
まるで盆と正月が一緒に来たようや。
私の傷の治りが遅いので、お
これは我が家の庭にずうっと昔から生えておった
登与がまだほんの小さい頃から、ずいぶん気が
この舞に、人型の姿を与えたんは私なのですが、娘時代の登与に生き映しです。そうやなあ、まだ登与が女学校に行っておった頃の姿でしょうか。
あの頃は私の妹も、目の中に入れても
ほんまに長い
「それで……あの化け物におとなしゅう食われてはったんどすか?」
我が家の座敷に居並んでおった登与が、帰ったばかりの外出着のまま呆れ顔で言うております。
言うたらあれやけど、俺が死んでおった間にお前は老けたな。大人になったと言うべきでしょうか。
怖いほど似ておるのです。私の死んだ母親に。
それはもう、ほんまに縮み上がるほど似ております。
私の母は美しい女でした。しかし心根はとても冷たかったような気がします。
「そやから、お気をつけてとあれほど言うたのに」
家の座敷には、
「びっくりしたわ、おとん。水族館の仕事、ほったらかしてきてもうた」
「まあ大丈夫やろ。水族館の人も話せばわかってくれるって」
困り顔の息子とは対照的に、
息子はなんでこんな
「
それを座敷の
なんでお前はそんな
わざと遠くに座ってんのやな。なんでや、ほんまに。お前は何をそんなに怒ってんのや。
「トヨちゃん、そんなもんは
これも珍しゅう、私の側に
誰や、お前、ほんまに
「ユミちゃんはいつ戻ってくるのや?」
我々は家の座敷で顔付き合わせて座り、例の
手足を生やして回復しきったところで、また、
そりゃまあ、急な再生に
ちょいちょい私の血をつまみ食いしながらとはいえ、まったく
まさに
「夕方には戻るていう約束で、
心配そうに登与が言うてます。
座敷の掛け時計が、ボーンボーンと四時を打ちました。
まだ四時ですよ?
一個も遅いことあれへん。ユミちゃんは動物園に行ったのですし、
「ユミちゃんはなぜあれを
人間のような姿に化けて聞かれると、実に
アキちゃんが描いた絵やという、その冷たい月のような姿を、私はじっと見ました。
まるで、ちっとも知らん神のようです。
「なぜかは知らん。起き抜けに川へ行くと言うてきかへんから、川へ連れていったら急に飛び込んで
「それがあの
おそらくそうやろな。
「お前はあれをなぜ
それがあかんかったかのように、
えっ。なぜって。あかんかったんか?
あのまま川に
いや、まあ、そうかもしれませんが……。
「悪い
笑いを
「ほんまにお前の
「俺が
「まあええんやないか。
面白そうに言うて、
座敷の中ほどで
「あいつハンザキていうのん?」
息子の代わりに
「そうや。けどそれは名前やない。お前が
この家、俺が知らんうちに何かが変わったな。
それが何かは分かりませんが、我が家がこの地に広大な領地を
「ただいまぁ」
大きな声が、玄関のほうから聞こえました。
これでほんまに、家族が全員そろいました。
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