006:暁雨、早朝に川原を散歩する(15)
「何を
気まずそうに後をついてきながら、
プンプンしながら、例の半分の男のおる客間へ向かいました。
さっきの動画を見せてみましょう。あれがミズグチさんかどうなんか、
正直言うて、長々と居座られても迷惑です。うちにはもう、新たな神を
息子はあの
かつて自分がこの家で
えぇ? どうなんや、あの妹は何を考えておるんやら。
あれも
まるで我が家で
そういえばユミちゃんには
こいつは、こいつのものなのや。
そやから、ユミちゃんの
それは
それで
それやったら、この
座敷の
まさかあの
動画を見る限りでは、あれが
いやぁ、それは。
所有者がいる
そやけど、所有者が誰かわからへんのやったら、ねえ?
迷うて来た
あいつが探してるていうミズグチさんが誰やったんか、我が家は知らんかったていうことにしておいても、ええんやないか……?
そない思うて、手をかけた
見下げ果てた奴やと言わんばかりの冷たい目です。
これが
「いや、待て、そうやないんや……」
察しのええらしい
「さっさと動画見せて、探してんのこいつやろ、今すぐ出ていけって言うたら?」
「あんな
思わず
「死ぬかもしれへんからやないか! さっさと会いたい奴に会わせてやるんが情けやろ」
「そない思うんやったら、お前がその
いかにしぶとい化け
自分の言うたその話に、私自身も
いくら迷惑やいうても、まだ追い出すのは無理や。
ユミちゃんの
まずはあいつの体を治し、
「坊はどんな化け物にでも
その向こうの座敷には、今も布団が敷いてあり、半分だけの男が寝ているはずでした。
半分だけの。
いや、それが。
見ればもう半分やのうて、どことのう可愛げのある顔と、体も、
えらい回復力や。これは中々の化け
取り逃すには惜しいなあ……。
いえ何でもないです。
「何やこれ、
怖い声で
「何やこれ、とは?」
「こいつ、治ってるやないか」
布団で
「そやな。まだ途中やけど」
そないに怒らんかてええのにと、
「何でや?」
顔をしかめて、
「二度三度は精つけさせてやったけど、まだ足りんようや。
ちょっと血をやった程度では、
物の怪は人の血肉やのうて、本来は恐れや信心を食うておるのです。もしくは愛情を。
そやけど、この家にはこいつに
死なん程度の血を吸わせてやるぐらいしか、してやれることも無いわけです。
そうですよね? そうでしたやろ?
皆さん今こそ証言してもらえないでしょうか?
「こいつと寝たんか!」
心なしか断定口調で
「そんなんしてへん」
ハッキリ言いましたよ。ハッキリ言いました!
「嘘つけ! ちょっとやそっとで、体半分モゲとったやつが、こんな急に治ったりするわけあらへんやろ」
いやいや、待てって。俺の話をよう聞け。
「生命力が強いやつなのや」
「どんだけ強かったらこんなケロッと治るんや。俺がお前ん家でぎったんぎったんにされた時、ここで何日寝込んだと思てんのや?」
そんなことあったっけなあ……。
頼むからそんな鬼みたいな顔せんとってくれへんか。俺はお前には弱いのやから。
「絶対寝たんや。それしか考えられへん!」
「血をやっただけや!」
こちらも慌ててハッキリ言うてやりましたが、時すでに遅しですか?
なんでや。ちゃんと言うたのに。言いましたよね?
「嘘つき……」
よっぽど信じてへんのか、
まずいな。これは。
むしろこいつのほうが化け物みたいやぞ。
「なんで信じてくれへんのや」
それが不思議で、
「
急に横から呼ばれて、ハッとしました。
布団の中で眠っていたはずの男が、言い争う声で目覚めたんか、身を起こし、なぜか
手足はまだ片方ずつしかあれへんさかいに、不自由な身で、それでも四つ足で
これはこれで青ざめ、飢えたような面構えです。
はあはあと苦しげな息をするその口元には、
あかんな。これは明らかに化け
なんで俺が
おかしいですやろ?
そやけど、そないなこと
私にね。
廊下で簡単に吹っ飛ばされてしまい、もう半分とは言えへん半裸の男にのしかかられてしまいました。
いやぁ力が強いなぁ。
しかも半裸といいますか、ほぼ
ほら、こいつを川で助けた時には体が半分だけやったさかいに、服かて半分しかあれへんのは
後から生えたもう半分のほうが何も着てへんのは致し方ないのです。
服は勝手に伸びたり生えたりはしいひんのですから。
そやから裸でも深い意味はあれへんのです。断じてないのやけど。
私は脱がせたりはしていません、ほんまです! 信じてください……。
「
血をね⁉︎
頼むから、もっとハッキリ言うてくれ!
そう願う私と
「ひどい……
家の
痛い。食われる。
まるで地獄やな。
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