006:暁雨、早朝に川原を散歩する(14)
「なんや……その
白い上着に白のズボンをはき、
なんの祭りや……
「
芝居の衣装か何かのようです。奇妙な
「見つけたのや、ミズグチさん」
「えらい早いな」
「
衣装の内ポケットからスマホを取り出して、
手のひらに乗るほどの小さい画面に、
世の中、えらい進歩したものや。
何度見ても
そこには今、目の前にいるのと同じ
『こんにちは!
はあ? これお前か?
驚くやら
「な、なんやねん。こういう仕事やの!
心なしかジタバタして、人の家の
しかもこの笑顔はなんや。こんな顔、俺は
「こんなん見んでええんや。早送り……」
気まずいのか、さっさと映像を早回しする操作をして、
『
画面の中の、子供が見る絵本の絵のような、布で縫われて作られた森のような部屋で、大きな木の
そこからロケットで打ち出されたような人影が。
どうもほんまに何かで打ち出されているようです。
ぴょんと若い男が飛び出してきました。
それも、やはり
画面には手書きの文字で、みずぐちゆうすけ先生、と表示されました。
そこで
「こいつ、
水族館の?
アキちゃんも水族館やて言うてたなあ。
虫の知らせていうんでしょうか。人間には予感があるものです。
我が家系にも予知能力のある者が
それでも、何かしら予感はあるものです。
何か強く呼ぶものがあれば、その声が遠くからでも聞こえるように。
「話したんか、この
「話したわ。仕事でやってる子供向けの動画のゲストなんや。今まさに
「どんな男やった?」
「カエルとチューするような男や」
はっ⁉︎ 何て?
「
「どういうことなんや……」
あまりの分からなさに私も青ざめました。
「生き物が好きすぎて何にでもチューすんのや。特に
ちょっ……。それは? どういう意味や⁉︎
「何にでもて……」
俺はそんなことしいひん。
ほんまですよ⁉︎ ほんまです! 信じてください。
何で
俺がいつそんなことしたのや⁉︎
お前がそないなこと言うたら、お聞きの皆さんが、ほんまの話かと思わはるやないか!
うっかり人聞きの悪いこと言うんやないわ。
「これや、これ。見て」
その映像の中では、先ほどの
そのイモリはヒョロリとした細長い灰色の体に、つぶらな黒い目をした小さいものです。見ようによっては
そやさかいにか、男は
ヒッ。イモリには毒があるのやぞ⁉︎
種類や個体にもよりますが、男はそれも
そやのにチューするやなんて⁉︎
人が死ぬほどの毒やないとはいえ、テトロドトキシンですよ。
フグの毒と同じものや。
そのイモリに口付けするとは、まったくもって
「この人この調子で何にでもチューするんや。それが見とってビビるし、なんや面白いってことなのやろうけど、怖いわぁ……俺にもやれって言うし」
「お前もイモリと口付けしたんか」
「してへんわ!」
俺がイモリに焼きもち焼くとでも?
ははは。まさか。
スマホの画面では確かに
でもこれは
良い子の
そこで
カメラは回っていましたが、会場では皆が
「何やこいつ⁉︎」
我ながら
「落ち着いて
「いつから日本ではこんな事するようになったのや⁉︎」
俺は聞いてへん。
いつの間に世の中が変わったのや。
「普通はしいひんけど、
「
本気で言うてるらしい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます