006:暁雨、早朝に川原を散歩する(10)
「夢見るのぉ、ときどき。夢の中で好きなとこへ行けるの。なんでかいつも、お外が夜なんやけど」
ユミちゃんは
「……」
話を聞いている
「なんで夜なんどすやろなあ?」
まあ、それは、普通やったらただの夢なのやろうけど、我が家では少々、事情が
「奥様……ユミちゃん様は、夢歩きしはるんやおへんか……?」
「お兄ちゃん」
急にキッとこっちを見て、お
「ユミちゃんは
早口に言うお
それも
逆に体だけが死んでしもうたら、
夢の中で
どこをどう通って行くのやら、
隣で寝ておったかて、それには気付きようがないです。体はずっと布団の中で寝てるのやから。
いや。まあ、危ないですけども、実は我が家系にはちょいちょいあることです。
上の暁彦はそういうことがなかったんでしょうけども、私には多少そういう
大人になれば直るでしょう。ジタバタしたかて、どうもなりません。
そやのにお
「ユミちゃん、あきまへん。危ないさかいに、ネンネするとき、夢など絶対に見いひんようにしなさい」
お
「そんなん無理やもーん」
そう言うてる間にも、見ればまたにゅうっと背が伸びております。
こっちの
まだまだ一人前になる日は遠そうです。
「それはさておき、例の半分だけの男とはどこで
ユミちゃんが話せるうちに聞いておかなと思って、急いで口を
ユミちゃんにも、
「夢の中で歩いてたら、何回か
「何回かて、あんた
お
「いつも会うんは、どんなとこでやったんや?」
「お水がいっぱいあるとこや。ほんで魚がおるんや。こんな……おとうさんぐらい、大き〜い魚も」
両手をいっぱいに広げて、
どこや……それは。そんな大きい魚がおるところって。
アマゾンか?
お
「
まるで自分に言い聞かせるように、
「はあ⁉︎」
次はこちらが驚く番でした。
「なんでや⁉︎」
「なんでて……そら、そうどすやろ。
「そんなん戦前までの話や。この家にはもう、そんな
「けど危のうおすし……」
小声でぶつぶつと
まったく母親というやつは!
可愛い子には旅をさせろて言うやろ。
まあ確かに危ないけどもや……。
ほんまに、うちの
「ほな
ユミちゃんが
お
「そういうことどすな!」
ぷいっとスネたように言うて、お
「京のどこかで、そないな大きい魚がおるとこが、あるやろか?
「川やないもーん。流れてへんもん。それにお部屋の中やもん」
「なんやそれ?」
首を
「
えっ、アキちゃんか?
そういえば最近、アキちゃんの顔を見てへんな。
ええ機会や。あれがほんまの、うちの
そうや、そうや。ちょうどええ。
あの真っ二つの半分男、うちの長男に何とかさせましょう。
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