002: Happy Birthday (3)
とまあ、普通やったら、これで終わりと思うやろう……。
もちろん俺もそう思ってたわ。あとはラブラブハッピーエンドやないか。全部語らんでええわ。お
そやのに帰宅したらな、我が家のセキュリティが破られていたんや。
「おぉー、お帰り
いつものダルそうな
ここ禁煙やぞコラァ! ノー・スモーキング・プリーズ‼︎
その兄やんの足元には、黒ダスがハフハフ言うて嬉しげに集まり、元のご主人様を恋しがってるみたいやった。
けど兄さんは邪魔くさそうに黒ダスを
何やっとんじゃワレェ‼︎ と
死ぬぞ⁉︎ お前⁉︎ そんなもん食うな⁉︎ 体おかしなるぞ⁉︎
俺は青ざめて見たけど、
「
無駄に色っぽい。なんやこいつ。常に色っぽいんや。
アキちゃんはそれにドギマギしちゃったように答えた。
「そ、そうやけど……」
なんで
その答えを聞いて、
「誕生日プレゼント、持ってきたんや。
天井を視線で指して、
たぶん、アキちゃんのおとんの
「俺、絵描くのに邪魔や言うて追い出されたんや。
にやにやしながら
「俺はあいにく先生に誕生日プレゼント何も用意してへんしな、しゃあないし体で払おうか。
それを見て、
「アホか。何をマジにとってんのや。そないなことするわけないやろ。俺は今夜は坊々の相手で忙しいのや」
にこにこして
銀の
別に何がどうって言えへんのやけど、大事なんやなっていうのが分かる
それって別に、ライターが好きなんやなくて、アキちゃんのおとんが好きなんやな。
そういうのええなって、俺はいつも
俺もずっとアキちゃんのこと、大事にしてやれたらいいな。
「絵、まだかな。遅いなあ。いつまで描いてんのや……」
一人で居てんのが
この人らは、俺とアキちゃんが買い物に出かけた後に来たのやろうし、兄やんも、そんなに長くは待ってへんはずやけどな?
せいぜい、一時間かそこらやろ。
そんな早くに絵なんか描けるもんかよ、と俺が思ったときやった。
ぱたぱたと革底の
ちょっとレトロな
そこからおとんが降りてくるんを見て、
ほんで、花が咲くように、にこーっと笑ったのや。
「坊、もう描けたんか? 早かったなあ。急がんでよかったのに」
めっちゃ優しい声で、
そのゲロ甘さに俺とアキちゃんは棒立ちで、顔色がまた一段と悪うなった。ほぼほぼ
「待たせて済まんかったな、
でもその手にはまだ、巻かれた絵の
「はい。これ。やるわ。誕生日おめでとう」
おとんは、
「大きゅうなったな、
「
キュンキュン来るので忙しい
それでハッとしたんか、
そして
お前どういう体してんのや⁉︎
それは俺でも一抱えはあるなっていう、ご立派な真っ赤っかの
重さもかなりやと思うのに、
化けもんやなこいつ! 知ってたけど!
「めでたいやろ」
アキちゃんは青ざめたまま、こくこくと
「でもな、アキちゃん。おとんはずっと知ってたのやけどな。お前は誕生日に
おとんは切々と、アキちゃんの切ない胸のうちを語ってくれた。
それ、いつの話やねん。アキちゃんが子供の頃の話やな?
アキちゃんもう二十三歳やで。大人やわ。
それとも、そういうのって人は永遠に大人にはならへん部分やろか。
「お
絵か⁉︎
まだ言葉もない俺の前で、アキちゃんはこくこくと何度も
「ありがとう。おとん。俺、嬉しいわ」
アキちゃんは子供みたいに、おとんに感謝していた。
「チョコレートか白いクリームかで、おとん悩んだのやけどな、
おとんは心配げに言うて、アキちゃんはそれにブンブン首を横に振ってた。
ショートケーキでええわて言うてんのやろな。
アキちゃん、甘いもん食わんのやけどな。お誕生日ケーキていうたら、白いホイップクリームにイチゴが乗ってるやつやなって思うてるみたいや。
そういうの、アキちゃんの知ってる普通の子は、みんな誕生日に買ってもらえたのやろうな。
誕生日ケーキか。そんなん要るんや。もう大人やし、要らんやろと思ってな、亨ちゃん、お誕生日ディナーは用意したけど、ケーキは無かったな。
要るやろて⁉︎
すんません! 気の利かん
けど、まあ、ケーキが
アキちゃんはちょっとドキドキしたふうに、渡された絵の
――つづく――
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