第9話 入学試験

 プロットの模擬戦から1週間。

 それから特にこれと言って特別なことはなかった。


 強いていえば城で出される食べ物がめちゃくちゃ美味かった。


 あれ全部が三ツ星は普通にいけると思う。

 三ツ星がどれくらいかなんて分かんないけど。


 あとは、戦闘訓練したくらいか。

 自分では結構成長したとは思う。


 今日は国王に呼び出されたから応接室に行くらしい。


 応接室のドアをノックして、「入るがよい」と聞こえたので中に入る。


「今日はな、学園への入学手続きが済んだから説明をしようと思って呼んだのじゃ」

 あ、学園の事か。

 そういえばすっかり忘れてたな。


「ちなみに試験はしっかり受けてもらうからの。

 じゃがまぁ、主たちにはもうある程度のことは教えてあるからの。特に勉強はせんでもいけるじゃろ」


 実は俺たちは1日に数時間、この世界のことを知るために授業みたいなものを受けている。


 その授業が興味深いし何より超分かりやすい! んで、効率いい!

 だからスラスラ頭に入ってくる。


 それに俺たちは元々頭が悪いほうじゃない、どちらかと言うと良いほうだ。

 レイなんて普通に学年2位とか行くくらいだし、俺は50位くらいは行く。

 400人中くらい。


 ここで自慢しておくが実は俺たちはまぁまぁハイスペックなほうだ。


 レイは頭はめちゃくちゃいいが運動は普通よりちょっとだけ出来るくらい。

 だが俺は全てにおいてまぁまぁ上位には入ってる。

 つまりは万能型って感じだな。


「実技試験はあるがの」

「実技?」

「そこは魔法を主にしているからの」

 魔法学園みたいな感じか!


「まぁ、その事についても今から説明するわい」

「あ、はい」


 ちなみにこの世界の学制は日本と同じだ。


「主たちがこれから通う学校はサンクテュエール王立ソルセルリー学園と言う」

 名前長いな……。


「ちなみにそこにはセレスもいるから安心するが良い」

 あ、よかった。

 初めてのところに1人は心寂しいもんな。

 ちゃんとレイもいるがレイも俺と同じようになんも知らないから戦力なんない。


「……」

 なんてことを考えているとレイにジト目で見られた。

 え、心読まれた?


「試験は明日じゃから体調整えておくんだぞ」

 明日!

 早すぎない?

 何も対策とかしてないのに!

 今習った内容だけでいけるのか?少し疑うな……。


 ―――――――――

 ……

 朝……。


 俺の頭がそう認識した時、

 ドアがノックされた音が部屋に響いた。


 ……うん?

 ……なんだ?


「おーいシン? 起きてるー? ……なわけないか、シンだもんね。入るよー」

 レイはそう言って勝手に部屋に入る。


「……お」


 俺と目が合う。


「シンが……起きてる……朝に……」


「……んぁ?」

 この時のシンの頭はレイの言ってることが理解できなかった。


「あ、なんだ。普通に起きてると思ったら脳は全然起きてないね。良かったいつものシンだ」

 ……?


「シンって相変わらず朝にはすっごい弱いよねー。ほんとなんでそんな弱いの?」

 ……?


「なんも反応しないし……まぁ、これもいつも通りだよね」

 ……?


「おーいシーンおーきーてー」

 ……なんか聞こえる気がする?

 夢かな?


「おーい」

 ……


「……」

 レイがその時に悪い顔になったのは、俺は知らない。


「……おりゃっ!」

「……ふぁっ!? だっ! まっ! あっ!? むっ! だめっ! もうやめっ! あっ!」


「やっと起きた?」

 レイが腰に手を当てて顔を前に出しながら言ってくる。


「起きたからもうやめて……」

 眠気と戦いながら俺は言った。

 寝ずに言えた俺、偉い。


「ほんっとシンって何故か朝とくすぐりにはすごい弱いよね〜。ほんとに、なんでそこだけだめなの?」

 ……俺が知るわけないだろう。

「はい、とりあえず着替えて行くよ」


 ……?

 どこに。


「やっぱり忘れてたね……。サンクテュエール王立ソルセルリー学園だよ。今日試験でしょ?」


「……せろりーさぶれー?」

 珍しい名前だね。

「ばか」

 レイはそう言いながらシンの頭を軽めに叩いた。

「あいたっ」


「セロリじゃなくてソルセルリーね、昨日言ってたでしょ?」


 ……あぁ、なんかそんなことあった気がしないな。


 まぁ、でもレイがこう言ってるんだしあるんだろう。


 俺は着替えて行く準備をした。

 眠気はマシになってきた。


 ―――――――――


 今学園来てる。

 ちゃんとソルセルリー学園のことは思い出したし眠気も結構マシになってきていた

 が、その後のことによって完全に目が覚めた。


 ……でっけぇ。

 この学園王城の5分の1くらいはあると思う。

 こう言ったらそんな大きいように聞こえないが、東京ドーム4個分以上はあるってことだ。

 これが学校て……。


 なんかこの国色々と建物大きすぎない?


「じゃあ即席だが、試験を始めるぞ」

 ソルセルリー学園の教師の人がそう言う。


「試験って何をするんですか?」

 レイが聞く。


「とりあえず試験は3段階ある。

 筆記試験、長所試験、実戦試験の3つだ」

「長所試験?」

「あぁ、受験者が自分自身のいい所を自由に見せるんだ」

 なるほど、なんとなく好印象を持つな。


 筆記試験は別に何も悩むことなく全て解けた。

 それもこれも全部王城での勉強のおかげだな。



 長所試験は、

 俺は影に同化して動くことを見せた。

 レイは雷を纏わせて雷の結界を作ってた。

 いつの間にそんなことできるようになってたんだ?


 まぁ、俺も空いてる時間特訓して出来るようになったことはあるけど。

 身体強化とか影纏わせる範囲広げられたとか、

 一応まだあるが、それはまだ秘密だ。



 実戦試験。


 これは相手を選べるらしい。


 武術特化のサロス先生。細マッチョの脳筋そうな人で赤髪赤眼だ。


 魔法特化のシエラ先生。白い髪に緑の眼でかなりの美形の優しそうな人だ。


 万能型のエクセレトス先生。空色の髪に透き通った蒼い眼の高身長イケメンだ。


 この3人から自由だそう。


 んーどーしよっかなー。


「じゃあサロス先生でお願いします」


 と、俺より先にレイが言った。


 まじか。

 てっきりシエラ先生だと思ったのに。


「なんで?」

 なぜか気になったので聞いてみた。


「ちょっと試したいことがあってね」

 まるで見てろという顔をしながら俺に言ってくる。


「なら、レイさんが先にやるからシンくんはその間に決めておいてね」

 ずっと俺たちを案内してくれている先生が言った。


 この人って何特化なんだろうな。

 女性で赤髪ロングだから……拳闘士とか?

 いや、ないな。


「では、構え!」


 レイとサロス先生の模擬戦が始まる。


 サロス先生が脳筋みたく一直線に突っ込んでいく。

 いや、脳筋だわあれは。


 ちなみに教師たちはその生徒に合ったレベルに調整して戦ってくれるそうだ。


 それでもサロス先生は50メートル4秒くらいじゃねレベルで動いているが。


 サロス先生がレイに大剣を振りかざした。

 瞬間、辺りが光に包まれる。


「むっ」

 思わずサロス先生も目を瞑る。


 次に目を開けた時、少しでも動けば触れそうな程の距離で、雷に拘束されていた。


 いや、分かりやすく言えば雷の結界に閉じ込められた。

 少しでも動けばダメージを受けるというのもあるが。


「これでいいですか?」


「ふむ、学生でこのレベルだったら良い方だろう。よし、終了だ」


「ありがとうございました」

 レイがぺこりと礼をする。


「ふふん、どうよ!」

 こっちに来てドヤ顔された。


 ぬいぐるみみたいだったので撫でた。


「……」

 レイが俯く


 そしたら頭を振って抵抗された。

 えー。


「それでシンくんは決まった?」


「あ、はい。エクセレトス先生でお願いします」

「いいの? この中で1番強いと思うけど?」

「はい」

「まぁ、ならいいけど」


「では、構え!」

 さて、初実戦使用だ。


 え、これは模擬戦だから実戦じゃない?

 ……うるさい、それは気にしたら負けだ。

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