第8話 四天王の模擬戦

 それから5分程で訓練所に着いた。

 でっけぇ……。


 見た感じ、東京ドームの4倍以上はあると思う。

 でもまぁ、一国の軍の一部とはいえ、軍だしな。


 当然っちゃ当然だ。


 そして訓練場に入るなり、プロットとここの部隊長らしき人10名ほどが話している。


 少ししたら、プロットがこっちに来た。

「今からあそこの部隊長12人対俺でやるから、しっかり見とけよ!」


 そんなことを言ってすぐに訓練所の中心に向かった。


 いやいきなりだな。


 でも、いくらなんでも大丈夫か? 12対1だなんて。


 ……大丈夫か。あんなチートだし。


 俺達は邪魔をしないよう、観覧席みたいな場所に行った。


「ではこれから、四天王第4席プロット=ケタール様と、各部隊長12名の模擬戦を始めます!」

 兵士さんが叫ぶ。


「構え!」

 両者構える。


 ここでの模擬戦は、始め! などとは言わないそうだ。

 なんか本当の勝負だったらそんなものは無いからとかいう理由でみたい。


 部隊長さん全員が一斉にこう叫んだ。

「身体強化!」


 身体強化ってスキルがあるの? 全員持ってるのか?

 セレスが俺が不思議にしているのを察して、説明してくれた。


「身体強化は魔力があれば誰でも使えますよ。というか魔法は 魔力、イメージ、理解 さえ出来ていれば誰でも使えます。スキルは能力を補助する存在ですから」

 まじか!


 え、じゃあ俺も氷とか火とか雷とか、やろうとすれば出来るってこと?

 よし、時間がある時にやってみよう。


 そしたら部隊長さん達は、全く見えない速さで動き始めた。

「おいおい、これはシンに見せるためのものだぜ? シンに見えるくらいの速度にしとけよ」

 プロットの気遣いが身に染みる。


 それが見えるほどの実力がなくてごめん! ありがとう!


「本気じゃなきゃ相手にもならないのでな! 本気でも相手にならないけど!」

 部隊長の一人がそう叫んだ。


 やっぱ四天王って、すごいんだな。


 すると、部隊長さん4人がいきなりプロットに向けて衝撃波を放つ。


 それをプロットは避けもせずに、ただ地面を踏んだ。

 それだけでプロット周辺の地面400平方メートル程が大破する。


 んな……! やっぱ強すぎだろ!


 放たれた衝撃波はプロットに直撃。


 ……したはずなのだがプロットは無傷。そして何故か部隊長さんの1人がダメージを受けていた。

 かなりダメージ受けてるな、この状態だったら俺の影纏わせた一撃で充分倒せそう。


 プロットはそこで踏んだ際に飛び散った瓦礫を浮かせた。


 あ、自由自在かな?


 それを部隊長さん達に向けて連射。


 しかも追尾追尾機能まであるようだ。


 さっきの、ダメージを受けた部隊長さんはそれだけでやられてしまった。

 みんなそれぞれ自分のやり方で向かってくる瓦礫を塵も残さず消滅させている。


 これはあとでプロットに聞いたんだが、塵でも残せばその塵を強靭で見えない武器にすることも、そのまま追尾させる見えない弾にすることも出来るそうだ。


 敵に回したくないわー……。


 そしてここでプロットが鎖をだした。

 鎖の魔法か! やっと見れる!


 俺は、その鎖を表すとしたら、これ以外に思い付かない。


『とにかく変幻自在で強度も斬れ味も速さも何もかも馬鹿げている鎖』本当にとにかくすごい。


 何も無いとこから何のサインも無く出てくるし、鎖がいきなり枝分かれして複数になるし、そこにあったのにいきなり消えるし、かと思ったらいきなり現れてるし。


 そんな理不尽にも思える力を持った鎖に、為す術なくバタバタとやられていく部隊長さん達。


 そして部隊長さんが残り一人になった所で、両者止まった。


 プロットは俺に観せるためみたいだが、部隊長さんは自分を落ち着かせるためみたいだ。


 これから何が起きるか待っていると……。


「……あ゛」

 部隊長さんが奇怪な短い声を上げながら倒れた。


 ……はい?

 何したんだ?

 プロットのスキルに、不意打ち出来るようなものは何も無かったと思うけど?


「終わったぞー! どうだ!」

 ドヤ顔してくるプロット。いやマジですげぇよ。


「それより最後のなんだ!」

「それよりって……」

 ちょっと残念そうなプロット。いいから早く教えろ。


「あれも鎖だよ」

「鎖?」

 それで何が出来るんだ。


「簡単だよ、鎖で相手の中枢神経と心を縛ったんだよ。簡単に言うと孤立させた。例えるなら鎖国みたいなもんだから俺はこれを『鎖国』と呼んでいる!」

 またドヤ顔をしてきた。


 動けなくして心を孤立ってことは……廃人みたいにしたってことか?


 いや、チート過ぎない?

 だってそれじゃ、誰でもどこでもいつでも戦闘不能にできるってことになるじゃん。

 どうやって防ぐんだよ……。

 四天王マジでチート過ぎだろ……。


 しかもまだ全然本気じゃないみたいだし。


「それ、防げるんの?」


「ん? 軍の将校以上の地位のやつとかは普通に防ぐぞ? あとA級冒険者以上」


 軍での階級は下から、

 一般兵

 小隊長

 部隊長

 将校

 大将

 席者

 となっている。

 席者ってのは1席から10席の人達のこと。


 冒険者は下から、

 E、D、C、B、A、S、SS、SSS、EX、Z。


 SSまではこの世界にまぁまぁいるそうだが、SSSは2桁行かないらしい。四天王はSSSの上位くらいの実力という。


 SSSとEXは格が違ってEXは化け物の中でもありえない化け物らしい。

 そしてその化け物は、今世界に2人、いるらしい。

 Zは英雄、マゴスしかこの世界の歴史の中でいないらしい。


 そのマゴスって、どんだけ凄かったんだ……?


「プロット様! 国王陛下がお呼びです!」

 そんな時、軍の隊員らしき人がプロットにそう声をかけた。


「ん? そうか、なら行ってくるわ。ごめんな」

「いやいいから早く行け」

 国王からの呼び出しだぞ?


 なんでそんなゆっくりなんだよもっと急げ。


 プロットの模擬戦を見た後、特にすることもないので俺達は部屋に戻る。


「じゃ、またねセレス」

「あ、はい……」


 挨拶をして別れようとしたが、どこか歯切れの悪いセレス。


 そんな様子をを不審に思った俺は、何か言いたいことでもあるのかと聞いてみた。


「何か、言いたいことでもある?」

「あ、いえ、ないですよ?」

「そう?」

「はい」


 ならまぁ、いいけど……。


「じゃあ、また」

「うん、また」


 そう言って俺は部屋に戻った。

 ふかふかぁ……。

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