相棒フェアリアルと僕の電子戦記
@Irezain
第1話 僕たちは今日も”狩り”を始める
ガジェットクロウ——、空間展開、掌握型の拡張現実が行えるデバイス。一見して銀色の卵——と形容できるその物体を、宙に放り投げる。
「空間固定——
カキンという可聴範囲ギリギリの音が波のように広がり、その成功を告げていた。
対象領域——ここから半径百メートルには邪魔は入らなくなった。いつものように仕事を始めていく。
「クロスデバイス《シェル》への接続確認——。ネットワーク接続を
手のひらをくるくると指揮を取るように回す。タイミングよくネットワークがレイヤードに重なりあっていく。
「
ついと注がれる情報の羅列。密度の濃い情報帯域が、圧縮されて脳に流し込まれる。
「
少女のかたちを成したフェアリアルが、寄り添うように、あるいは僕自身であるかのように、自身の実態に重なる。
「……まだねてたんだけどなあ」
彼女は悪態をつく。
「これでも気を遣ったつもりだけれど? さそもそも物理身体がある僕はともかく、フェアリアルである君には疲れという概念は無縁では?」
はいはい、と言うように彼女は手をひらひらとさせた。
「きぶんのもんだい」
気分の問題か。
「まだこなれてないんだよ。でふらぐがおいついてなかったり……ちょいまち」
ふわりと彼女のシェルが曖昧になったかと思うと、パキンと明瞭な輪郭を帯びた。
「
「
彼女は苦虫を噛み潰したような顔をした。その綺麗な顔を躊躇いなく歪ませるのは、彼女らしいと言ったところ。
「……また、
くるくると変わる表情は見てて飽きない。期待がないまぜになった表情。
「チャフも何度も使うと有効性が薄れていくから、今日は素直に狩りかな」
「やったっ! まどろっこしいのは、私の性に合わないんだよね」
「……そうやってまた逃げられるなよ。後で困るのは僕らなんだから」
「分かってるよー。下手な
ちっちっちっと彼女は指を揺らした。
「——じゃあ」
あくまでも僕は冷静に。
「いっきましょうか!」
彼女は冷徹に。
今日も狩りが始まった。
相棒フェアリアルと僕の電子戦記 @Irezain
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