第10話 この世界のよく飛ぶ話。

「分解・解析……」


 最後の階層が終わりその先に出口が見えてきた。


「このダンジョンも終わりと思うと少し感慨深く感じますね」


「ふむ。そうかもしれんのう。だが、このダンジョンは全て我が手中に有り」


「ふふふ。そうですね。中身もう空っぽですものね」


「うむ。まあ、それだけではないのだがな。どれ、地上へ出るか」


「はい!エド様!」


 約4年ぶりにみた空は満天の星空で満たされていた。


「久しぶりの外だー!ん?でもなんだか息苦しいような。しかも何だか熱い?」


「ふむ。人の住む恒星にしては重力値が高いかの」


 そして、周りは荒野の島を取り囲むように崖に押し寄せる波と果しない海だった。


「はは。これって……結局あいつら、ゲヘナ送りにした人を一人として生かして返すつもりは更々なかったってことね。有りもしない希望をちらつかせて……あいつら、人の皮を被った悪魔だわ!」


「ふん。まあ、それも今日迄だがな」


「え?」


「フェイズ3発動」


〈フェイズ3起動シークエンス確認しました〉


「リーシャ。少し上に上がるぞ」


「え?あ、はい。」


 リーシャの手を取り、空中に空気の層を集めて二人浮かび上がる。


 するとダンジョンだった荒野が分解の光を帯び、空に形を成し別の構造物に変わっていく。


〈ダンジョン・ゲヘナを超弩級空中移動要塞・空母艦エクセリオンΣに再構築しました〉


 ダンジョンだった場所に大穴が空き、その中に大量の海水が流れ込んでいく。


 そして、目の前には超巨大な要塞艦が空中に鎮座していた。


「え、エド様!これはいったい?」


「うむ。とりあえずの我らの拠点だ」


「は、はあ」


「乗艦する。リーシャ行くぞ」


「は、はい!」


 手を繋いだまま散歩する様に空中を移動し、ブリッジに向かう。


〈マスターの識別登録記録完了しました。これよりマスターへの権限委譲を実行します。……完了しました。ようこそマスター。エクセリオンはマスターを歓迎いたします〉


「うむ。エクセリオン。リーシャを客人登録」


〈かしこまりました。人名リーシャのスキャニング開始。終了。登録しました。ようこそリーシャ・エル・グリフォニア。エクセリオンは貴女を歓迎いたします〉


「な!」


「ん?グリフォニア?なんだ。リーシャは王族の出であったか。」


「エド様まで!何故!」


「ん?この世界の解析は終わっておると言うたではないか。しかし、であればマナーレッスン等は学んでおったか。不要な訓練をさせたな。すまん」


「いえ、エド様。多くを学んで不要等と云うものは御座いません。それに私は国に疎まれ、国を追放された身。ただの流民でございます」


「うむ。だが主は国に対し色々と思う所があるのではないか?」


「確かに、思う所はございます。しかし、今の私はエドワード様の私物であり、唯一お仕えするのもエドワード様。貴方だけにございます。

 ですからエドワード様は私などの些事で心を煩わす事などあってはいけないのです」


「リーシャ。主は我の客人だ。決して我のものではない」


「では!どうかお願い致します。私をエドワード様のものにして下さい!」


「リーシャよ。主は本当に良いのか?いくら国を追われた身とはいえ、罠にはめられたのであろう?失った全てを取り返したいとは思わないのか?それに、全てが主を罪に定めた訳でもあるまい」


「それは……」


「我は主をあらゆる面で鍛えてきた。お主の今の能力をもってすれば取り返す事など造作もない。なのに何を躊躇う。この星の者ならばこの星で幸せを掴むのが道理。そうではないか?リーシャ」


「それでも……それでも私は貴方のものです!」


「しかしのう。……ふむ。リーシャよ。我の元ばかりに居ればこの星での幸せも掴めん。なので一度お主を国へ返す。そこで主の取り戻すべきものを取り戻すが良い。

 なに、焦る事なぞあるものかリーシャよ。我の元にはいつでも来れようぞ。なにせ主は我のものなのだろう?」


「エド様!」


「リーシャよ!取り戻してこい!全てを!それでこそ我の弟子に相応しい。そうであろう?」


「かしこまりました。エド様。勅命、謹んで承けたまりました」


「うむ。ならば行こうぞ」


「はい!エド様!」


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