第6話 この世界のよく困る話。
「ふむ。オウガが200体位か。そろそろ試すか。リーシャ。此方に」
「え?はい。エド様」
「集団戦をやる。だが決して殺めるな。相手の力量、集団による連携、予期せぬ死角からの攻撃。全て予測して事に当たれ」
「は、はい!いって参ります。エド様!」
「無理はするな。何度だって仕切り直せる」
「はい!」
始まった集団戦は一騎当千の様相を呈した。様々な武器を用いて流麗に円舞の様に、時にフェイントを交えたトリッキーな動きで、200体ものオウガは10分も持たず全て戦闘不能になっていた。
因みにリーシャに与えた武器は何れも刃がない。
エレメントを纏わす事を前提としているからだ。
なのでエレメントを纏わさなければ一切切れない。
撲殺はできるが。
「うむ。良くやった。リーシャ戻って来ていいぞ」
「はい!エド様」
どうやら息切れもしていないようだ。
「ふむ。とりあえずは及第点か。さて探索に戻る。リーシャ!行くぞ」
「はい!エド様!」
そうして何時もの分解・構成・考察・再構築のルーチンを行って行く。
あれから10年と4ヶ月と3日の時が経つ。
この世界を解析し始めた時に時を刻み始めた。
この数字は正確だ。
その為、最近ダンジョンと地上の時の進み方が違うのではないかと考察し始めた。
切欠になったのはリーシャの成長速度だ。
この間不意に誕生日の話になりリーシャに今何歳か聞いたことがある。
彼女の答えは15歳で送られたから、多分もうすぐ17歳位だという。
確かにダンジョンは時の感覚を麻痺させる。
だからと言って10年を2年と感じるだろうか。
こんな閉鎖空間だ。
逆にもっと長く感じてもおかしくはない筈なのだ。
そして、体の成長速度。
女性の成長期間が男性よりも早く終わるといっても今のリーシャは成年女性には見えない。
彼女が言うように16,7歳。
いや、むしろ出会った当初と変わらないまである。
何故か女性ホルモンの分泌量が多くなり色気の様なものは出てきたが。
流石にのんびりも出来なくなったかもしれん。
ダンジョンを脱出したとしてもリーシャの家族や知り合いが全て死に絶えていたでは、余りにリーシャが不憫な気がするし、もう少しピッチを上げる必要があるのではないかと考え始めている。
「リーシャ。そう言えば、お主の家族は健在なのか?」
「え?私の家族ですか?はい。恐らくは誰かしら生きているのではないでしょうか」
何故か地雷を踏み抜いたような感覚を覚える。
「そ、そうか。仲は余り宜しくなかったのだろうか」
「ええ、そうですね。私を嵌めて殺す位には仲は宜しくなかったですね。うふふふふふふふ」
ま、まずい完成された完璧な地雷だったではないか。
目が完全に死んでる。
「そ、そうか。ならば急ぎ戻らなくてもよいのだな」
「え?急いでくれてたんですか?」
「うむ。想定外の情報が上がってきてのう。先程この世界の解析が終わったのだが、地上ではもう10年経っているらしい」
「え?嘘ですよね。だってそしたら私25歳」
「うむ。だが我々が感じていた時は長くても2年ほど。ダンジョンと地上では時の流れが違うのかもしれん」
「そ、っか。それなら私はまだピチピチの青い果実。エド様!今の内に美味しく召し上がっ……(バシッ)痛い!」
「頭の悪い対応をするな。エロガキ。そんなに番が欲しいのか?」
「つ、番って。……なら私、エド様がいいです!(バシッ)痛い!」
「全く、そんな頭の悪い娘に育てたつもりはないぞ。早く寝ろ」
「ふぁーい」
自分で頭を撫でながら自分のテントに入って行くリーシャを一瞥しながらため息を吐く。
「さて、どうしたものか。後半分といったところで困ったものだ」
ダンジョン脱出まであと1258階層。
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