第4話 この世界のよく泣く話。

 その日、やけに広い層に出た。何時もの探究をサクサク進め、ふとそこで一つの実験をしたくなったのでリーシャに試してみるよう伝えた。


 初めは空中に空気の層を作り出しその上に乗る実験。


 どんどんと高い位置まで上って貰い天井にタッチして戻ってきて貰った。


 続いて空気の層を纏って等速直線運動をして貰った。


 止まる時には空気の層を初めは薄く、徐々に厚くして緩衝材にした。


 次に空気の層を纏って等速直線運動を上に向けて行い、また天井にタッチして戻って来て貰った。


「うむ。リーシャちょっと空を飛んでみてくれ」


「は、はあ?え、エド様。失礼ながら人は空を飛べません」


「む?何を言っている。限界を定めてしまったら後は、停滞していくだけだぞ!いいからやれ!」


「そ、そんなぁ。グスン」


 ……数時間後


「や、やりましたー!エド様!見てくれてますかー!」


「ふむ。リーシャ。アクロバットはできるか?」


「えーと、旋回とか宙返りとかでいいですか?」


「ああ、問題無い。やってみてくれ」


「あ、はい。」


 リーシャは空中でぐるぐると周り始め体を捻ったりと次々にトリッキーな動きをし始めた。


「あははははー!エド様!これ楽しいかもー!」


 始めはゆっくりとだった軌道が徐々に速度が上がりそして失墜した。


「……」


 呆れ目で救出に向かう。お姫様抱っこされたリーシャは目を回していた。


「ふむ。三半規管の強化が必要か。良いデータが取れた。加速実験は外に出てからだな」


 久しぶりに抱いたリーシャはとても良い香りがした。若干くらくらする頭を制止ながら雌の匂いがするな。番が欲しいのか?等と考えていた。


 ようやく目覚めたリーシャに労いの言葉をかけ、対応策と応用の仕方を教えた。そして、気絶していた間に用意した食卓と椅子、シックな食器に豪奢な料理を提供してみた。


「え、エドワード様。これは一体」


「うむ。今日の実験に付き合って貰った礼だ」


「エドワード様!ありがとうございます!」


「うむ。堪能するが良い。ついでだ、テーブルマナーも学べ」


「え"?エド様?」


「なんだ?」


「い、いえ。なにも」


「ふむ。しかし鎧が邪魔だな。リーシャ。此方に来なさい」


「は、はい」


 そう言って簡易ストレージを頭、胴、手足分、双剣分と一つオマケに九つ分を付与し、ついでに脛防護用の防具とカチューシャ型の兜を着けさせ、イベントリへの脱着と装着の仕方を瞬時に出来るよう訓練させた。


 食事の後、物はついでという事でマナーレッスンが始まり美しいカーテシーの仕方や社交ダンスのレッスンと盛りだくさんだった。


 継続は力という事でこれから何度でも鍛えてやると言うと、リーシャは「うわーい。嬉しいですー」と棒読みで宣ったあげく、何故か死んだ魚の目になっていた。


 解せぬ。


 ダンジョン脱出まであと1785階層。


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