第2話 この世界のよく聞く話。
「ふむ。ここは」
早速この空間の解析に入る。バージョンが上がったからか解析時間がわりと早い。
「ふむ。2558階層のダンジョンか。名前はゲヘナか。大層な名前を付けるものだ」
ついでにこの世界も解析する。
「ダンジョン内の既存の生物は……多いな。まあ出会ったら対処するか。む」
目の前にラスボスがいた。
「ふむ。解析は終わっているな。ならばサクッと終わらせる事にするか。少々考察もしたいしな。」
▽エレメンタルギドラ▽
LEVEL-55765
skill-超速再生・エレメンタルバースト
ラスボスにしては随分とスキルが少ない。そんなものなのか?そんな思考を巡らせながらラスボスの後ろから近づいていったが、近くに来て気づいた。
どうやら食事中らしい。
銀髪の少女を食している最中だった。
「ふむ。」
エレメンタルギドラを一瞥し分解した。降ってきた少女は既に事切れていた。構成・再構築を使って体を戻すが再起動するだろうか。
「ごほっ」
どうやら再起動したようだ。そしてそのまま、すうすうと眠ってしまった。
「ふむ。さて彼方で解析した空間を構成・ストレージに再構築。うむ。中々良いな。さて次は」
先ほど分解して手に入れた〔超速再生〕と〔エレメンタルバースト〕を解析する。指先に〔超速再生〕を付与すると勢い良く爪が延び始めた。
「このままだと使えんな」
付与を外し、続いて指先から〔エレメンタルバースト〕を放ってみる。
腕が吹き飛んだ。
「うむ。」
顔を顰めて腕を構築する。そしてエレメンタルギドラが〔超速再生〕と〔エレメンタルバースト〕に適合していた理由を考察する。
「うむ。そういう事なのか?」
試しに自身の体をエレメンタルギドラの体組織を融合させ徐々に慣らしていく。するとエレメントの使い方が感覚として解る。手元で様々な元素結合が出きるようになった。
「ついでだ。エレメンタルバースト」
彩色に輝く光の渦が放たれ轟音と共に壁が抉れた。
「ウヒャー!」
飛び上がって周りをキョロキョロする銀髪少女。
「な、なに?何が起きたの?」
「なんだ、起きたのか?」
「え?だ、誰?」
銀髪少女はずりずりと後退りしながら距離を取り始める。
「貴様こそ誰だ。何故ここにいる。」
「私は……」
「ふん。用がなければ大人しくしてしろ」
「……」
大人しくなったので私は〔超速再生〕の考察に移った。もう一度指先に〔超速再生〕を付与する。今度は変化が無い。近くの鉱物を分解・再構築でナイフを作り、自分の指を切り落とす。するとすぐに再生した。
「ひっ!」
こちらを伺っていた少女が落ちた指を見て悲鳴をもらす。落ちた指を分解する。
少女がガクガク震えていた。
「どうした。寒いのか?」
「ひっ!い、いえ別に!」
「そうか」
それと同時に、ぐうぅぅぅ。と音が響く。少女は慌ててお腹を押さえる。
「なんだ、腹が減ったのか?」
「いえ!ちがっ違うんです!」
仕方ないと思いつつギドラの肉を構築、ナイフで刺して火のエレメントで中までじっくりと焼く。
焼いている最中に再び、ぐうぅぅぅ。と音が響く。
「さあ、食え」
「え!で、でも」
「いいから食え。喧しくて叶わん」
「は、はい。ありがとうございます」
手にとって夢中で食べ出す。その光景を見つつ近くの鉱石でコップを作りエレメントで水を注ぐ。少女にコップを渡すと食べ終わった直後に水も飲み干す。
落ち着いたところで情報収集でもする事にする。
「我は探究者、エドワード・q・クライスラーである。貴様の名はなんだ」
「う、わた、私は……リーシャ……です」
「何故ここにいる」
「そ、それは……罪を着せられて……ゲヘナ送りになったんです」
「ゲヘナ送り?なんだそれは」
「ゲヘナ送りとは罪人の刑の一つで転送陣でこのゲヘナに送られるのです。罪の重さで階層の深さが変わって無事に戻れれば罪が許されます」
「成る程。それでゲヘナか。頓知が効いている。それで戻れたものはいるのか?」
「いいえ。一番軽い罪でも100層送りなので、この刑は死刑と一緒なのです」
「だろうな。だが戻れれば無罪になると」
「はい。そうです……けど無理です。今だって私なんで生きているのかさえ分からないのに」
「いや、貴様は一度死んだぞ。ギドラに喰われていたのを我が再構築したのだ」
「え?」
「え、ではない。我が再構築したと言ったんだ」
「で、では私は死霊なのでしょうか」
「何を言っている。死霊が飯を食うか?」
「そ、そう言えば……では何故」
「ギドラの因子で貴様の体を再構築したのだ。だから性格に言えば元の体ではないな」
「えっと、すみません。言ってることが良く分からなくて」
「まあ、要するに貴様は生物として生きているということだ」
「は、はあ」
「そんな事より貴様。此処から出たくはないか?」
「え!出られるのですか!」
「まあ、研究と考察をしながらになるので、すぐではないが出る事は可能だ」
「ぜ、ぜひ!お供させて下さい!」
「うむ。然らば生き残る為の力をやろう。近こう寄れ」
「は、はい」
ふむ。ギドラ因子との再構築は良好のようだな。肩に手をかけ〔超速再生〕と〔エレメンタルバースト〕を付与する。リーシャの体が輝く。
「ふむ。それである程度マシだろう」
「え!え!何ですかこの感覚!」
スキルを通してエレメントの流れを感じとったのだろう。
「さて、このダンジョンは中々興味深い。早速探索に行くか」
「は、はい!エド様!お供します!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます