少し無茶をしたので少し眠い。慣れない空間魔法なんて使うもんじゃない、すごくだるい。

 少し無茶をしたので少し眠い。慣れない空間魔法なんて使うもんじゃない、すごくだるい。

 結局昨晩も抱き枕にされて身動きが取れなかった。

 朝起きた後も同居人に出かける様子がないのでそれとなく聞いてみると、一週間くらい休むって。

 仕方がないので作業……のふりをして自分にための霊装をいくつか強化した。

 夕方に作業をやめて、夕ご飯の準備を……しようと思ったら台所から邪魔だって追い出された。

 しばらく不貞腐れて床の上で丸まってたら、背中蹴られた。

 何事だって起き上がったらテーブルの上に二人分の食事が、豚の生姜焼きだった。

 生姜焼きは美味しかった。

 片付けもやらせてくれなかったので風呂に入る……ふりをして昼間に強化した霊装使って空間魔法を発動、防音その他も使ったので同居人には気付かれない、と思ってた。

 結局バレたけど。

 空間魔法を使って空間に穴を開けて、大家さんちに繋げた。

 あらかじめ連絡はしてたので、あちら側で少し調節してもらって目的の座標に繋げる。

 ちなみにこの時点で魔力消費が半端なかった。

 繋いでもらったのは大家さんちの部屋の一つ、日当たりの良さそうな、少し小さめの部屋。

 その部屋の中に広めの檻が置いてあって、その中で火龍がぐったりとしていた。

 同居人(親)と引き離されたせいでしばらく暴れ続けた上に、落ち着いた後もずっと何も食べていないと大家さんから事前に知らされてはいたけれど、ここまでぐったりしているとは思わなかった。

 小さく声をかけると、火龍はバッと顔を上げて威嚇してきた。

 ごめんなさいと謝った、こんな事態になってしまったのはキサラギの不手際が原因だから。

 キサラギがもっと上手くことを運べばこんなことにはならなかたのだから。

 それだけは顔を合わせて謝りたかったんだ。

 火龍は威嚇の姿勢を解かなかった、それもそうだろう。

 火龍からすれば、キサラギさえいなければ、といった感じなのだろうし。

 だからその後はこの先のことに関して話した。

 同居人はキサラギがいつか必ず引きずってでもそちらに連れて行くから、ちゃんとご飯を食べて元気でいてほしいということ、どうか死なないでほしいということ。

 それからは契約についての話を。

 誰と契約するかはキサラギが決めるべきではないのだけど、いくつかの提案を。

 まずは誰とも契約せずに野生に帰るという選択肢、こちらはほぼ確実に良からぬ人間に付け狙われるのがわかりきっているのでお勧めはしないが、ひとまずそういう選択肢もあるということだけはいっておく。

 次に大家さんか精霊マニアさんと契約するという選択肢、こちらに関しては火龍の安全はほぼ確実に保障される、同居人に関しては……頭が冷えればたまには顔合わせに来るだろう(というかキサラギが連れて来る)といっておいた。

 次、同居人の心変わりを待って同居人と契約するという選択肢、こちらに関してはおそらく時間がかかる、そもそも心変わりをするという可能性も現状では低い、といっておいた。

 最後、キサラギと契約するという選択肢。

 これを言ったらお前それ正気かとでも言いたげなすごくすごく嫌そうな顔をされた。

 でも一応メリットも伝えておく、同居人がキサラギを捨てることは天地がひっくり返ってもありえないだろうから、確実に奴の傍にいられるのは多分この選択肢だということを。

 そのあたりまでだーっと話して、今すぐに決めなくていいから少し考えておいてほしいこと、また時間を見て空間繋ぐなりキサラギがそっちに赴くから、ゆっくり考えてねって言った時だった。

 脱衣所の戸がノックもなしに開かれた。

 後ろ振り返ったら同居人が、音とか魔力とかでは勘付かれないように色々使って誤魔化してたんだけど、なんで気付かれたんだろう……

 脱衣所じゃなくて風呂場でやればよかったなと今更になって思った、風呂場なら流石にラッキースケベを恐れて入ってはこなかっただろうし。

 大家さんちに空間が繋がってるのを見た同居人が怒った顔で「何やってる」って言ってきた。

 ……この時ちょっと焦ったというか、慌ててたんだろうね。

 咄嗟に同居人から離れようとして、足を滑らせて大家さんちに繋いだ空間の穴の方にすっ転んでしまった。

 大家さんちの部屋の床に尻餅つくと同時に同居人がキサラギのことを呼ぶ声が聞こえて、その直後に空間の穴が閉じた。

 やっべぇって思った、幸い端末は持ってたからすぐに通話した。

 矢継ぎ早に、足滑らせて大家さんちに移動してしまったことと、すぐ戻るから待っててほしいって言ってたら、背後に人の気配。

 キュって声が出なくなるあの感覚を久々に味わった……やっぱそう簡単に治らないな。

 硬直した直後に端末がとられた、振り返ると大家さんが立っていた。

 以下、大家さんが言ったセリフ。

「よう如月君、キサラギちゃんは預かったぜ。返して欲しけりゃ迎えにきな」

 それだけ言って端末の電源落とした。

 返してもらおうと手を伸ばしたら、返してはくれたけど、如月君が来るまで連絡はとらないどけよって言われて返された。

 とりあえず待ってようぜと客室に連れていかれて、なんか高そうな茶菓子を出された。

 うさぎの形の練り菓子だったんだけど、なんかすっごい美味しかった。

 甘さが上品だったんだよね。

 食べ終わった後に大家さんがどっかに行ってしまったし、同居人もこないので、日記を書いて暇を潰している。

 ここから先はもう明日書けばいいか、多分全部終わった後に日記書く余裕なさそうだし。

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