バレた、ぬかった、超怒られた、しこたま怒られた人生で一番怒られたかもしれない。

 バレた、ぬかった、超怒られた、しこたま怒られた人生で一番怒られたかもしれない。

 キレ散らかすなんてものじゃ済まなかった、何かもっと恐ろしいものだった。

 昨日、同居人が帰ってきた時からの事を書き記そう。

 布団でごろごろしながら日記を書いている時に同居人が帰ってきた。

「ただいま」って言ってきた同居人の方を振り返って「おかえり」って言おうとしたんだよね。

 声は普通だったから、その時点では特に何も気付かなかった。

 振り返ったら同居人、なんかすごい笑ってたの、ニコニコニコニコ、って感じで。

 だけどなんかもう全然楽しそうな雰囲気じゃなかったんだよね、むしろ正反対のどす黒い何かを感じた。

 それでも引きつった声でなんとか「おかえりなさい」って言ったら、同居人は素晴らしい笑顔のまま、やけに優しげな声で「何か言うことはないか?」って。

 首を横に何度も振りながら「ナニモナイヨ」って言った、同居人はニコニコ笑いながら「本当に?」って聞いてきた。

 もうやけくそだった、何言ってももうどうしようもなさそうなので「ない」って言った瞬間、同居人が般若と化した。

 咄嗟に逃げようと思ったけど駄目だった、気付いたら馬乗りにされて怒鳴られてた。

 ふざけんじゃねえぞとか、なんで隠したとか色々怒鳴られた。

 どうも例の件が全部バレたらしい。

 万が一見られてもいいように日記には色々と誤魔化したりぼかしたり縦読みにしながら書いていた、例の件について。

 ぶっちゃけてしまうと火龍を狙う怪しげな組織が、同居人には絶対に敵わないからとキサラギを人質にしようとしてたっていう、例のアレだ。

 怒鳴られながらもどうしてバレたのか探ると、どうも先日コンビニ行く時にキサラギが例の組織の連中を返り討ちにして大家さんを召喚した一時始終を、同居人の狩場の知人が見ていて、世間話でそういえば……って話したらしい。

 同居人はその話を聞いた直後にすぐに大家さんに連絡して裏を取ったらしい、大家さんは初めは誤魔化そうとしてくれたみたいだけど、最終的に諦めて全部吐いたって。

 例の組織に関してはそこそこ注意を払っていたつもりではあったけど、目撃者に関してはあんまり気を使ってなかった。

 流石に帚星荘の人とかが居合わせてたら口止めしてたけど、同居人の知人がいるとは思ってなかったから……

 これに関しては完全にキサラギの詰めの甘さが招いた事故だ、目撃者も押さえて口止めしておくべきだった。

 大家さんに裏を取った同居人は、狙われてるから気をつけろと忠告しに来た大家さんにキサラギが同居人にこのことは隠したままでカタをつけたいから協力してほしいって頼んだことやら、それと引き換えに槍の製作を引き受けたということやら、その他諸々のいろんなことを知って、激怒した。

 それで大家さんに誘われて例の組織を潰しに行くということになったらしい。

 なんでもこの前とっ捕まえた例の組織の構成員が、拷問の末とうとう本拠地その他の情報をゲロった直後に同居人が大家さんに殴り込みに行ったらしい。

 なんでこんなタイミングよく(悪く?)事が運んでしまったのか……

 キサラギが同居人を探しに外出しないように知り合いとご飯に行くから遅くなるって連絡入れてから、同居人は例の組織を襲撃しに行った。

 ……あれうそだったのかよ、キサラギ結構嬉しかったのに。

 怪我したりしてないかと心配したけど、ほぼ無傷っぽい、大家さんもいたんだしほぼ圧勝だったんだろうな。

 ……で、その他事後処理を大家さんに任せて帰って来たらしい。

 …………なるべくまとめて書いたけど、これらの情報は全部ガチ切れした同居人の説教の合間に少しずつ聞き出したものだ。

 超怒られたしものすごく罵倒された、何度もふざけるなって言われた。

 怒られて当然の事をしたのだから当然だ、多分今回の件でキサラギの信用は地に落ちた。

 それでも、今回の件に関してはどうしても同居人に気取られたくなかったのだ。

 だって、自分のせいでキサラギに何か良からぬ事があれば、同居人はその原因を容赦なく切り捨てる。

 落ち着いて話し合えばそうはならなかったのかもしれない、けれど、どう考えたってその話し合いがうまくいく想像がつかなかった。

 同居人にとって一番大事なのは不本意ながらキサラギだ、キサラギのためなら平然と命すら捨てるだろう。

 だから隠し通すという選択を取った。

 だから、同居人には申し訳ないけど、隠していたことに関しては反省していないし、後悔もしていない。

 あるのは自分の不手際への後悔だけだ。

 同居人が少し落ち着いたのを見計らって、火龍はどうしたって聞いてみた。

 いないのはとっくに知ってたけど、どこに置いてきたのかはわからなかったから。

 同居人は大家さんのところに置いてきたって答えた。

 絶対そうするって思ったから、隠す事にしたんだ。

 そう言ったら、同居人は顔をくしゃくしゃに歪めた。

 結局真夜中の遅くまで怒られた。

 朝まで続くかもなと思ったけど、言いたい事を言い終わったのか、キサラギがほぼ反省していないのに呆れ返ったのか、夜中の三時くらいに「もう二度とやるなよ、やったら手足もいで一生飼い殺しにしてやる」って言われて説教が終わった。

 風呂入ってくるって言って部屋出てったのはいいんだけど、逃亡防止のつもりなのか手足を縄で縛られた上に布団で簀巻きにされた。

 同居人が戻って来た頃には汗だくになっていた、せめて布団を外してほしい、あと冷たい飲み物を飲まないと多分熱中症になるって言ったら、布団は取ってもらえたし、飲み物もくれた、けど縄は外してくれなかった。

 その状態のまま抱き枕にされて、起きたのが昼過ぎくらい。

 何もしないから縄解いてくれって頼み込んでやっと解放してもらえたけど、少し身動きするだけで睨まれる。

 昼には同居人が作ったうどんを食べた、というか食べさせられた。

 そのあとはずっと互いに無言だった。

 夕方になったので冷凍御飯をチンしておにぎりでも作ろうと思って冷蔵庫を開けてたら、同居人に「邪魔だ」って台所を追い出された。

 しばらく待ってたら野菜炒めを出されて「食え」って。

 ありがたくいただく事にした、美味しかった。

 食べ終わった後に後片付けくらいはするって言ったのに動くなって言われた。

 しばらく待ってたら風呂入ってこいって言われた、先に入っていいよ遠慮したらいいから入ってこいって。

 それで風呂に入って、また簀巻きにされて、その間に同居人が風呂に入った。

 同居人が風呂から出て解放してもらったので日記を書いている。

 今日はもう少しし起きていようと思う、まだ眠くないし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る