第56話 新発売
目が覚めると見たことのない天井が目の前に広がっていた。多少の痛みと
俺は一体どれくらい眠っていたのであろうか?あの横断歩道を渡っている途中に車が飛び込んできた所までは記憶があるのだがその後の事を全く覚えていない。まあ、眠っていたのであれば仕方がない。
ちなみに、
俺が目を覚ますと母は大粒の涙を流しながら喜んでくれた。
下手をするとあのまま喧嘩別れをしたまま、母親とも永遠の別れになってしまうかも知れなかったと思うとホッとした。
「よう!」
母に聞いた話によると彼も凄い心配をしてくれて方々に手を尽くしてくれたそうだ。
俺の意識が戻ってからもこの不似合いな個室の病室に要られるのも彼のお陰だそうだ。
「今回はありがとうございました。母さんの事を宜しくお願いします」端から見れば実の父親に今更何を言っているのかと思われそうではあったが、十何年間も離れていた親子とはそんなもんだ。
「こちらこそ、改めて宜しくな」そう言うと彼は握手を求めてきた。俺は照れ臭そうにその手を握り返した。
「そうだ、
「あ・・・・・・ああ、
「そうなんですか!凄いですね。自分の父親と妹が芸能人って、俺友達に自慢できそう!」俺は少しだけ業とらしくはしゃいで見せた。
「
「貴方、一ヶ月以上眠りっぱなしだったのよ。早く元気になってよ。これ差し入れよ」母は言いながら俺のベッドの横に本を置いた。それは
「なっ、なんだよ!これっ!」俺が真っ赤になっていることを自覚している。
「前回のヤツが好評だったから、新しい写真集が発売になったのよ。変な事に使っては駄目よ!」母はいたずらっ子の顔をしていた。あんたは
「アホか!病人に言う事か!!」俺は呆れる。
「それじゃあ、持って帰ろうかしら?」母は本を持って帰ろうとする。その母の服の裾を俺は掴んだ。
「・・・・・置いてってください・・・・・・」小さな声でお願いした。
「ハイハイ、素直で宜しい!でも、何回も言うけど変な事に使っては駄目よ」
「ア、アホか!だから病人に言う事か!!」母と渡辺直人は大きな声で笑っていた。
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