「えー！マジかよ！」俺は母の話を聞いて飛び上がった。渡辺直人と俺の母親が再婚するそうである。

「なんでそうなるんだよ！あの親父の浮気が嫌で別れたんだろ！それに相手は芸能人たぞ！一般の人とは違うんだぞ」俺の頭の中で何かが暴れている。

「何を言っているのよ！元々あんたのお父さんじゃないの！他人と再婚する訳じゃないのよ！なんで反対するのよ、信じられないわ！」珍しく母が怒っている。

「母さんはアホなのか！アホなのか！今まで散々俺に父親の事を隠しておいていきなり寄（よ）りを戻すって退（ひ）くわ、めっちゃ退（ひ）くわ！」考えられんと俺は思った。

「なによ！二回もアホって！！あんただって穂乃花（ほのか）ちゃんともしょっちゅう会えるようになるのよ。穂乃花（ほのか）ちゃんの水着姿の写った写真集買うぐらい好きなんでしょう」無茶苦茶な事を言うなと俺は呆れた。

「あれっ……、ちょっと待て、ま、まさか写真集の事を穂乃花（ほのか）達に言っていないだろな！？」冷や汗が俺の額から溢れでる。

　母は何かを誤魔化すかのように、無言のまま目を宙に泳がせて鳴らない口笛を吹いた。

「ま、まさか……、写真集の事を言ったのか！言ったのか！言ってしまったのか！？」自然と一歩後ろに下がる。その事実は俺にとっては痛恨の一撃であった。穴があったら入りたいという気持ちがこの歳になって思いっきり解った。元々知らなかったとはいえ、妹の水着の写真集を隠れて購入する男を、気色悪いと思われるんじゃないのか。

「だって仕方がないじゃないの！出来るだけ盛り上（あが）る話をしないといけないと思ったから……！直人さん、めっちゃ笑ってたわよ」言い訳をしているようであるが、その光景を思い出したように吹き出した。俺は何！生け贄なのか？

「ち、畜生！母ちゃんのアホー！！こんな家出てってやる！」俺はそのまま家を飛び出していった。