第49話 写真集
「しもうた……、赤本買うつもりがこんなも
「
「あわわわわ!入る前にノックをしろっていってるだろ!」俺は突然の襲撃に先ほど買った物を床に落としてしまった。
「なにこれ、エロ本?」床に落ちた本を拾い上げてそれを開いた。それを見て俺は何処かに逃げ出したい気持ちになった。
「アホか!今時エロ本なんか何処にも売ってないわ!」そういえばコンビニでもオリンピックに向けてそういう類いの書籍を扱わなくなったと聞く。期間中に訪れる外国人観光客への配慮らしい。
「あら、これ
「なんか……つい……勢いで……」言い訳が見つからなかった。
先ほど入った書店のゴールデンコーナーとも云うべき場所に大々的にそれは山積みされていた。
『今、話題沸騰中!渡辺穂乃花写真集追加入荷しました!』
「おおおお!」俺は思わず変な声をあげてしまった。本を見てみようと恐る恐る本を手に取り中を見ようとするがビニールで包装されていた。表紙を見ると見慣れた彼女の笑顔、それを凝視してしまう。端から見ればなにやら超能力で念視でもしようとしてると思われてるかもしれない。
「う、うんうん!」大きな咳払いが聞こえた。
「あっ、すいません……」俺は横に体を反らした。
頭の禿げた中年の親父が
そして決意を固めてその本を持って俺はレジへと向かったのだった。
「この本ならお父さんから何冊か送ってきてたわよ。サイン入りのやつ」母のその言葉を聞いてずっこけた。
「それなら早く教えてくれよ!結構高かったんだぞ!」大学入試の赤本を買うお金が無駄に消えてしまった。
「だって、まさか妹の裸に興味があるなんて思わなかったから……」なぜか恥ずかしい物でも見るような目で俺の事を見る。
「アホか!裸なんか写ってないわ!エロ本と違うっちゅうねん!で、何か用があったんだろ!?」母の手から本を奪い取る。
「ああ、お父さんが今晩一緒に食事しないかって、
「俺はパス!」なんだか
「そうなの、そんな写真集まで買ってるくせに、本物に会えるのよ」子供の心親知らず、本当にほっといて欲しい。
「もう、いいって」俺は
「そう、後で後悔しても知らないわよ」言いながら扉を閉めたと思ったらもう一度隙間から顔を覗かせた。
「その本で変なことしたら駄目よ」ニコリと微笑んだ。
「うるへー!」俺は扉に写真集を投げつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます