第26話 許してやってよ

ひかり君……、あの……」バスの窓側の席を陣取る俺に友伽里ゆかりが声をかけてくる。


「ちょっと、一人にしてくれないか……」あの後、穂乃花ほのかが人妻ではなかったこと、道に迷って足を挫いて彼女に助けてもらった事などを説明した。

 友伽里ゆかりも流石に言い過ぎたと反省はしていたが、時は遅く傷ついた穂乃花ほのかは既に一人で帰ってしまっていた。

 悪戯をした堂島は酷く責任を感じて何度も謝ってきたが、俺の中では穂乃花ほのかとの距離を縮める結果になったので彼に対して心底怒ったりはしなかった。ただその思惑は一切顔には出さないようにしていた。


 ただ、穂乃花ほのかが傷ついてしまった事は変わりなくて、俺の配慮の無い勘違いがひとつの要因であると考えると気持ちが沈んだ。今度、学校であったらどんな風に声を掛ければ良いのかをずっと考えていた。


 友伽里ゆかりは肩を落として本来であれば穂乃花ほのかが座っていたであろう席に移動した。


ひかり君、許してやってよ。あれでもずっと心配して夜通しロビーで待ってたんだからさ」前の席の上から桂川かつらがわがヒョッコリと顔を出した。

「別に怒ってないよ。色々考えたいだけなんだ」窓の縁に肘をついて外の景色を眺めた。


「そうなんだ……」桂川かつらがわは呟くと自分の席に座り込んだ。


 今回、警察が出動するような騒動を起こした事で、俺達委員会のメンバーは学校に着いてから大目玉を食らう事になったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る