第24話 蛍
暗闇の中で俺の足が負傷してしまった事もあり、ひとまずこの場所で夜を明かして明るくなってからホテルに帰る事にする。闇雲に歩いても状況は改善しないと思ったからだった。
「ふー、なんだか疲れたね」
「なんだかんだ言って結構歩いたからな」目的地が解らす歩き続ける事はかなりの苦痛であった。少しは足の裏も痛い。こんな山道を歩くのであればもう少し厚底の靴を掃いてくれば良かった。まあ、海に来て山道で迷うとは思っても見なかったのだが。
「ねぇ、あれは何かしら?」小川の流れるような音がする。その近くに小さな灯りが幾つも飛び交っている。
「
「蛍?私、本物の蛍を見るの初めて!」
「この時期だと平家蛍かな?人があまり来そうにない場所だから穴場なのかも知れないな」蛍には、源氏と平家があって源氏を見れるのは7月頃までと聞いたことがある。
「すごく綺麗……」
「
「
「なにそれ
「お前……、いや、ほ、
「うん、そうだよ。あれでも結構有名なんだけどなぁ。私が生まれる前はトレンディドラマの主役もやっていたのよ」少しだけ自慢するように彼女は胸をはった。しかしトレンディドラマと言われても正直ピンとこなかった。蛍の光に照らされたその姿が少しだけ
「ト、トレンディって、よく解らないよ、俺はほとんどテレビを見ないからな」言いながら深夜アニメや漫画はよく見ている。
「でも、これでも結構大変なのよ。お母さんがいないからひなの面倒私が見たり……、まあ一応家政婦さんもいるんだけどね。長期の撮影があったりすると転校しないといけない事も多々あるし……」彼女は少しだけ悲しそうな顔をした。そこには俺達一般人では解らない苦労があるのかなと勝手に考えていた。
「この旅行の間、ひなちゃんは?」
「祖母が泊まり込みしてくれてるの。転校が多いのだから出来るだけ行事には参加して思い出を作りなさいって、パパが頼んでくれたから」膝を強く引寄せて唇を隠すようにしながら蛍を見つめている。
「ねえ、貴方の事を
「え、まあ、構わないよ、みんなそう呼んでいるし……」冷静に考えれば、学校でも普通に
「光君、貴方のご両親は?」
「ああ、父親は俺が小さい時に死んだので顔も知らない。
「ふーん、凄いお母さんだね」感心してくれているようだ。
「でもさ、学生やりながら妹の面倒もって……」急に
「えーと、ちょっとこれって……
その顔に警戒心は全く無く、安らぎの表情であった。
「本当に疲れたんだな……」俺は
辺りの光もゆっくりと消えていく。
蛍達の
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