第18話 警察の動向2
刑事警察部門専用の会議室では、◯△高校で起きた殺人事件を解決に導くための会議が行われていた。
厳粛な雰囲気で包まれているその場は、議題を討論する声以外全く聞こえない。
現在はグレーの制服をピシッと着こなし、丸眼鏡を掛けた柿本陽平が先日、明石正義に頼まれた調査の結果報告をしているところだ。
「先日、明石正義警部に頼まれた調査の結果報告を行います。私からは、主に4つの調査報告があります。
まずは1つ目について、現場の遺体のDNAと相模勇気の部屋から見つかった髪の毛の毛根から採取したDNAなのですが、98%と高い一致率を示しました。このことより現場の遺体は相模勇気でほぼ確定したと思われます。
そして次に2つ目について、事件に関係があると思われる相模勇気、日向沙耶華、木陰悠介3人の関係性を、クラスメートや保護者に聞き取り調査を実施した結果を報告します。木陰悠介は他の2人とはほとんど関係性がなかったことがわかりました。そしてここからが重要なのですが、クラスメートや近隣の住民に聞き取り調査を行った結果、相模勇気が日向沙耶華に対してストーカー行為を行っていたことがわかりました。クラスメートの供述によると彼は毎日、日向沙耶華を粘りつくような視線で見つめ、休み時間など嫌がる日向沙耶華に対して無理やりつきまとっていた様子が目撃されています。さらに近隣の住民によって学校の帰り道であろう日向沙耶華の後ろを追跡する相模勇気の姿が目撃されています。」
なるほど、と明石正義が頷きながら意見を述べる。
「それならば次の可能性が高いように思える。遺体が発見された前日、ストーカーである相模に襲われた日向は相模と取っ組み合いになった際に階段に突き落とした。打ち所が悪く相模が死亡。相模による自殺に見せかけるために死体を燃やし、その後逃亡。
待てよ・・・確か、日向沙耶華の母親は最近解体された△△教団の幹部だったな。親が親なら子も子だろう。この事件はストーカー行為に辟易した日向沙耶華による計画的な犯行の可能性もあるんじゃないのか。」
しかしその意見に対して柿本陽介が疑問点を述べる。
「待ってください。確かに日向と相模がトラブルになって、その際に日向が相模を階段から突き落として殺害した可能性は高いと思います。
しかし日向が自殺に見せかけるため死体を燃やしたのはおかしいと思います。それならば彼女が逃亡するのはおかしいでしょう。逃亡するなんてわざわざ疑ってくださいと言ってるようなものなのだから。だから私は死体を焼いたのは日向ではなく、第三者がなんらかの目的で行ったことだと思います。
それと日向による計画的な犯行の可能性は低いと思います。クラスメートや近隣の住民の聞き取り調査から推測される日向沙耶華の性格はかなり内向的なものでした。人との関わりを積極的に忌避するような。そのような人間が計画的に人を殺せるとは私は思いません。」
明石正義は嘲笑を浮かべながら意見を述べる。
「なるほど、確かに死体を燃やしたのは日向ではないのかもしれないな。
しかし私はやはり日向による計画的な犯行だと思うよ。
きっと日向の性格が内向的なのは、親が犯罪者であるという事実に対して周りにとやかく言われたからだろう。そのことに日向沙耶華は傷ついて内向的な性格になった。そして友達もおらず不満のはけ口のない日向の心の奥底にどんどん暗い感情が膨らんでいき、やがて爆発した。相模はそんな日向の暗い感情をぶつけるのにちょうど良かったのではないか。」
柿本陽介はそんな明石正義をキッと睨みつけ、反論する。
「明石警部、未だに日向沙耶華が黒と断定できる証拠はありません。確かな証拠もないのに断定するのはやめませんか。視野が狭くなり、重要なことに気づけないかもしれない。」
それを聞いた明石正義はやれやれと言った仕草をして、3つ目の調査報告をするように促す。
「それで、3つ目の調査報告なのですが、携帯会社に連絡して、日向沙耶華と木陰悠介のスマートフォンの場所を特定しました。その結果、木陰悠介のスマートフォンは彼の自宅から見つかったのですが、問題なのは日向沙耶華のスマートフォンは東京に存在しているようなのです。」
明石正義は少し驚いた表情をして、考察する。
「1日で兵庫から東京間を移動した?新幹線か飛行機で移動したとしか考えられんな。◯△高校付近の駅、バスなどの公共機関付近に設置された防犯カメラは確認したか。」
「確認しました。しかし、日向沙耶華と木陰悠介と思われる人物は確認できませんでした。現在、警視庁による日向沙耶華のスマートフォンの捜索が行われています。」
そう言うと柿本陽介はふうっと一息吐いて、少し間を開けた。
そして指を4本立てて、最後の調査報告を行う。
「そして4つ目の結果報告ですが、これが一番重要です。相模勇気と思われる遺体があった場所の階段上のフロアーから犯人のものと思われる指紋が検出されました。」
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