第19話 不穏なフラグ
私が過去の出来事を木陰君に暴露したその日の夜は山の上で寝泊まりし、朝早くにセミの鳴き声と共に目を覚ました私たちは山を降り、自転車で東に進んだ。
昨日の出来事で、私は胸のつかえが1つ取れたようで、体力的に疲れているはずなのに、気持ちはいつもよりずっと軽かった。心なしか景色が輝いて見える。
私は早朝の静謐な空気が全身に染み渡るのを感じながら、
人気のない道路の真ん中を思い切り自転車で飛ばした。
自転車を快調に飛ばすこと4時間、私たちの目の前にはどこまでも続く美空色、瀬戸内海が広がっている。日差しが海面に乱反射して煌めいている。
私たちが進む道に隣接しているビーチは海水浴を楽しむ老若男女で溢れかえており、賑やかな雰囲気が流れている。
私がそんな和やかな景色を羨ましげな視線で見つめていると、イヤホンでラジオを聴きながら先頭を走る木陰君が速度を落として私の横に並んだ。
「ちょっと、渡したいものがあるから止まって。」
私は軽く頷き、自転車を止める。
木陰君も自転車から降りて、鞄から謎の粉が入った袋と・・・鋭利なナイフを取り出し、誰にも見えないように私のポケットに突っ込んだ。
「今、ラジオでNHKのニュースを聞いていたんだけどさ、今朝早くにさ神戸市で何者かが警察官を襲い、拳銃を奪い逃走中だってさ。だから、もしもの時のための武器を君に託した。」
私は不穏なフラグだなぁと思いながら、1つの提案を口にする。
「この先の神戸市で事件があったのならば、もちろん警戒感が強まっていますよね。少し遠回りになりますが、大回りして神戸市を通らないようにしましょう。」
木陰君は少し難しげな顔で呟く。
「おそらくこのまま進んでも大丈夫だと思う。事件があったのは神戸市のだいぶ北のほうだったからね。僕らの進む南の道は安全だと思う。ゴホッ!」
会話の最後で木陰君が突然咳き込む。昨日山の上で野宿をしたせいで体が冷えたのだろうか。
今日は早いところ寝床を見つけて休まなければと思う。
事件が起きたのはそんなことを考えていた時だった。
私の思考を遮るように、突然ビーチの方から叫び声が鳴り響いた。
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