第16話 警察の動向1
焼死体と思われる遺体が見つかった◯△高校の東棟4階の階段の下には、身元不明の死体の跡を象ったチョーク・アウトラインが引かれている。そしてその周りを数人の警察官がふわふわ付きの耳かきのようなもので指紋採取を行っている。
そしてその現場を見つめながら、顎に手を当てて考え事をしている男がいた。
彼の名は明石正義と言う。この事件を解決するための捜査チームのリーダーに任命された男だ。性格は真面目を絵に描いたような男で面白みがない。しかし捜査の正確さには定評があり、事件解決において彼ほど頼りになる人物はいない。
そしてそんな彼に声をかけるものがいた。彼の名前は柿本陽平、捜査チームの1人である。彼は持ち前の地頭の良さを明石正義に買われこの捜査チームに抜擢された。
「明石警部、死体の司法解剖の結果が出ました。死体の気道内に蓄積された煤の量と気道熱傷の具合を調べたところ、やはり死因は焼死ではありませんでした。直接の死因は首の骨折による頸髄損傷だと思われます。」
明石正義はやはりなと頷きながら考察を述べる。
「やはり焼身自殺ではないよな。普通の学生が肉体的、精神的に耐え難い苦痛を感じるような自殺方法を選ぶわけがない。首の骨折か、普通に考えたら階段から突き落とされて首の骨が折れて死んだ可能性が高そうだな。・・・そうだ校門に設置されていた監視カメラの分析は進んでいるか。」
「はい。順調です。死体発見前日の7月31日に学校にいた関係者は全て把握しました。そして面白いことがわかっています。連絡の取れない生徒が3人いるんですよ。」
「その3人の名前は?」
「3人ともこの学校に通う生徒でした。1人目は相模勇気、17歳男性。2人目は日向沙耶華、17歳女性。そして3人目が木陰悠介、17歳男性。全員高校2年生で、3人とも同じクラスメイトでした。」
明石正義は少し考えるそぶりをし、やがて指令を下した。
「なるほどこれは大きな手がかりだな。死体は男性だったから、身元不明の死体は相模勇気か木陰悠介の可能性が高い。
相模勇気と木陰悠介の自宅から彼らの DNAが採取できそうな検体を探せ、そして科捜研に連絡して採取した検体と死体から採取した検体とのDNA適合率を調べろ。これで死体の身元が特定できるだろう。あと、行方不明の3人を捜索するのは当然として、この3人のクラスメートや保護者に聞き取り調査を行い、その3人の関係性を調べろ。」
柿本陽介は「合点承知の助。」と言って、指令の遂行に取り掛かった。
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