4日目
9月24日、燈野店長と初めて食事をした。
今まで断っていたのは嫌いだからじゃなくて、心を許したら消えてしまいそうで怖かったんだ。
その不安が的中してしまった。
トイレに行った後、燈野店長の姿がなくて戸惑っていると、電話が掛かってきた。
燈野店長の番号なのに、声は見知らぬ人でとても怒っていた。
「コウちゃん……」
声の通りに場所を移動すると、鎌のようなものを突き付けられて怯えた燈野店長がいた。
青い長袖シャツ……ミューデさんの同じ服装の男性を見て、僕は彼がイオちゃんだとわかったんだ。
そして、彼は昨日のことを恨んでこういうことを起こしたとも察した。
ザクッと切れた音ともにジンジンと痛むお腹。
温かいものが流れ出ていくので、やっと死ぬんだと思えた。
「どや苦しいか? 苦しいよな……でももっと苦しまな、アカンで」
ニヒルな笑みを浮かべて燈野店長へ向かっていくイオちゃんを止めるため、僕は鎌を抜いた。
「このままだと僕は生き残りますよ……トドメを刺して。そし、たら……春の、も、とに」
涙とともに意識が遠のいていく僕。
「コウちゃ~ん!!」
燈野店長の叫び声が最後の記憶だった。
口無香来は殆ど死んでいる 斎藤遥 @haruyo-koi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。口無香来は殆ど死んでいるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます