むかご飯

何故か、ふと思い出した

遠い秋の日のこと

「今日は、むかごめしよ」と

あれは母の声だったか祖母だったか

昆布だしと塩だけで炊きあげた

白いホカホカご飯に混じった

小さな豆のような灰茶色の ”むかご”

「これが ”むかご” 山芋の赤ちゃんね」

そんな説明を聞きながら

ひと口、ゆっくりと噛んでみる

ホコホコとしたその味わいは

確かに山芋の風味

シンプルな塩味の素朴な食感が

口中に広がっていく



ああ、あれは

なんと優しい日々だったことか

当たり前のように其処にあったものを

想う



むかごの採れる場所も

山芋のつるの見分け方も

聞き損ねたままだったから


あれから、むかごめし

もう、食べていない

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