【詩集】十六夜書簡

つきの

十六夜書簡

月がとっても綺麗だから

手紙を書きたくなったのです


十五夜お月さんの明くる夜

躊躇ためらうように出るゆえに

十六夜いざよい月と呼ぶのだと

あなたが教えてくれました


伝えきれない心のように

丸めて反古ほごにした紙が

畳の上に散らばって

もどかしさばかり募ります


逢いたい、という四文字を

書いては消して反古ほごにする

言うても詮無せんないことなのに

想いばかりは止められず


躊躇ためらいながら書く手紙

窓から見える十六夜いざよい月は

わたしの気持ちも知らぬげに

たおやかに、ただ美しく


月がとっても綺麗だから

手紙を書きたくなったのです


出すか出さぬか、わからぬけれど

ただ、それだけのことなのです

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