2 あと、一四日

 よくわからないけれど、僕のカウントダウンは始まったみたいだ。相方はこのホタル。さっきコーラを買ったコンビニ袋の壁をとことこ登っているコイツだ。どうやら僕はこのホタルと同じタイムリミットになったらしい。つまり僕の命はあと、一四日。期限が決まったからって何かしたいことがあるわけじゃない。


 夜道を一人とぼとぼと歩き始めたその先に、小さな灯りが見えた。赤黒く煤けた暖簾をくぐると、威勢のいい声が飛び込んできた。

「らっしゃい。何にするかい」

のんびりメニュー見ている暇なんて与えちゃくれない。

「ラーメンをひとつください。あと、餃子も」

「お客さん、定食にすると安いよ」

「じゃ、それで」

あ……。いつもの癖で「安いよ」と言われるとすぐにそれを選んでしまう。安いのを選んだってどうせ意味ないのに。待っている間、さっき起こった出来事を思い出していた。笑うと顔いっぱいに皺ができる腰の曲がった不思議なばあさんが、僕の命をホタルと同じにしたって言ったんだ。なに信じてんだかって思うだろ? でも、きっとあのばあさんはマジだぜ。マジで僕のタイムリミットをホタルと同じにしたと思う。


「お待たせ。熱いから気を付けてね」

店主の奥さんらしきおばちゃんがトレイにラーメンと餃子、それからスープを乗っけてやってきた。ラーメンのスープが白い。そうか、ここらは「ラーメン」を頼むと豚骨ラーメンが出てくるんだな。ところ変わればってやつだ。割り箸の半分を口にくわえながら勢いよくもう半分を引っ張ると、片方が極端に短くなった。ま、僕の人生なんてこんなもんだ。

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