第14話 報告

初めて日本にやってきた。

誠司と一緒に。

理由は政治の両親に結婚の報告をする為。

いろいろ手続きが面倒だけどそこは割愛しよう。

誠司は2年後に帰国した時でいいと言ったけど、私の両親には報告しておいて、誠司の両親にはまだというのはおかしい。

飛行機で空港に着くと電車に乗って誠司の故郷地元に行く。

随分と田舎みたいだ。

地元につくと誠司の両親が迎えに来てくれた。

誠司の家に着くと誠司のお父さんが「まあ、ゆっくりしていって」と言ってくれたけど、そうはいかない。

私は誠司と一緒に、リビングにいた。

こういう時はセイザするのが日本の風習だと聞いていたけどソファに座っていた。


「この人が僕の婚約者のパオラ・アルマーニさん」


誠司に紹介してもらうと私は礼をした。


「よろしくお願いします」


日本語は誠司が教えてくれた。

誠司のお父さんが私をじっと見ている。

私が誠司の嫁にふさわしいか見極めているのだろうか?

誠司のお母さんはじっとしている。

誠司のお父さんの一言を皆待っていた。


「本当に肌白いな……」


それが誠司のお父さんの第一声だった。

誠司のお父さんはイタリア人を見るのは初めてなんだろうか?

その時誠司のお母さんの拳が振り上がる。


「誠司、パオラさんはどうだった?英語は聞いたことあるがイタリア語は……いてぇ!」


誠司のお父さんが何かを言おうとしたとき、誠司のお母さんの誠司のお父さんの頭上に振り降ろされた。

イタリア語がどうかしたのだろうか?


「……気にしなくていいよ」


誠司がそう言ったのでとりあえず置いておこう。

こういう時確か言う言葉があったな。


「至らぬところばかりですがよろしくお願いします」

「パオラさんは日本語を勉強したんだね。上手だよ」


誠司のお母さんに褒められた。


「でもそんなに緊張する事は無い。もっとリラックスしてくれ」


その後、イタリアの事、誠司のイタリアでの生活など色々聞かれた。


「トーヤじゃあるまいし、普通の和食の店予約していたんだ。そこで食事しよう」


そう言って豆腐料理屋に連れて行ってくれた。

橋の使い方に戸惑ったけどスプーンみたいなのもあったのでよかった。


「お口に合うかな?」

「美味しいです」


緊張していたのか、薄味だったのか正直味が分からなかった。

食事をすると銭湯に行く。

家族湯というのを誠司のお父さんは主張したけどお母さんが却下した。


「だって外人って本当に……いてぇ!」

「お前は息子の嫁を何だと思ってるんだ!?」


日本人って偶によく分からないことを言う。

そういえば誠司も同じような事を言っていた。

そんなに白人に興味があるのだろうか?

結局私は誠司のお母さんと女湯に入った。


「やっぱり若いっていいよな……」


誠司のお母さんは私を見てそう言った。

そうは言うけど誠司のお母さんもとてもきれいな肌をしていた。

日本の銭湯の入り方を学んで湯船に浸かる。


「ありがとな」


誠司のお母さんが礼を言った。

何の事だろう?


「誠司から話は聞いたんだ。あいつが怪我した時支えてくれたみたいだから」


誠司もあの時はやっぱり沈んでいたらしい。

それでも誠司にはサッカーしかなかった。

サッカーにしがみつくしかなかった。

くじけそうになった時に私がいてくれて助かった、誠司のお母さんに話したそうだ。


「私で役に立ててよかったです」


私は誠司の帰る場所になれたんだ。

よかった。


「あいつは誠に似て困った性格だけど、根は良い奴なんた。どうかあいつを支えてやって欲しい」


スポーツ選手のメンタルを支える大変な役割が妻という存在。

そう言って誠司の母親は頭を下げた。

銭湯を出ると誠司の実家に帰る。

一泊して翌日にはイタリアへ戻る。

早く戻っていつでも試合に参加できるように調整する必要がある。


「いい両親だね」


私は帰りの飛行機で誠司にそう話していた。


「まあな、いつも喧嘩してるけど」

「誠司もそうなるのかな?」

「パオラと喧嘩はしたくないかな」

「そうしてくれると助かる」


イタリアに帰ると誠司のチームメイトがお祝いをしてくれた。


「ちゃっかりしてやがるな」


そういって誠司を弄っていた。

短い休暇が終るとまた試合に向けて調整が始まる。

忙しいのは誠司だけじゃない。

支えるスタッフや私も色々気を使ってやらなければならない。

誠司のスケジュールの調整もあって式はイタリアで行われた。

日本代表のメンバーも招待した。

式が終るとあらかじめ準備していた新居に帰る。


「あのさ……」


新婚初夜に誠司が話しかけた。


「どうしたの?」

「育児は日本でいいか?」

「どうせ、誠司は日本に帰る気でいたんでしょ?」

「まあ、そうだけど」

「私はどこにでもついていくよ」


その覚悟はこの前伝えたはずだよ。


「ありがとう、色々苦労すると思うけど」

「あれから誠司の母親ともメッセージしてる」


仲良くなれてるから心配ないよ。


「わかった」


その後生まれてくる赤ちゃんについて話をしていた。

やっぱりサッカー選手にしたいのかな?

まだ私達の物語は始まったばかりだ。

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