513球目 ラッキーセブンはラッキーじゃない

 7回はラッキーセブンと言われ、試合展開が動きやすい。



 埼玉さいたま翔出しょうでの攻撃は夜野よるのから始まり、1番へと回る嫌な流れだ。ここは何としてでも夜野よるのを抑えにゃ。



「ボールフォア!」



 あちゃー。力み過ぎて四球フォアボールにしちまった。



 友野とものは送りバントの構えをする。夜野よるのを2塁でアウトにすれば俊足の友野が1塁、友野をアウトにしようと1塁へ投げれば、1・2塁オールセーフか1死2塁だ。どっちにしろ、ピンチ継続だ。



 とにかく友野をアウトにする。俺は今日イチのボールを投げた。



「うぐっ!」



 打球はサードの小フライに。勝った!



「アウト!」



 ランナーを進ませず、友野をアウトにした。俺は小さくガッツポーズする。



 次の千本せんもとには送りバントされたが、今日ノーヒットの分多ぶんただから問題ない。



「ピンチヒッター越岳こしだけ君」



 ゲッ! ここで代打の切り札か。センバツ準決勝の代打逆転サヨナラ満塁ホームラン、予選では6打数5安打と大当たり。目の病気で昼間は長く守りにつけないため、代打専門になったそうだ。



 彼はサングラスをしっかりかけ直して、打席に入る。天塩あまじお龍水りゅうすいに匹敵する強打者のオーラだ。



「プレイ!」



 初球は内角低めインローのストレート。攻めは厳しく大胆に!



 カキキィンンン!!



 今日の試合1番の快音が、甲子園球場に響いた。



(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る