512球目 主導権が握れない

 埼玉さいたま翔出しょうで綾倉あやくら監督は小首をかしげる。



「うーん、イマイチ流れに乗れんなぁ」



 6回表は青郡あおごおりが三振に倒れたものの、安藤あんどう春島はるしまにヒットが出た。しかし、張川はるかわ三原みはらが凡打になり、点に結びつかなかった。



「流れはこっちで変えるか」



 烏丸からすまが三振したところで、綾倉あやくら監督は動く。



「ピッチャー青郡あおごおりだ!」



 6回途中3失点の夜野よるのがレフト、キャッチャーの青郡あおごおりがピッチャー、レフトの三原がキャッチャーになった。



 青郡あおごおりは予選3試合で4回投げて6奪三振1失点、リリーフとして活躍した。センバツでも2回投げて1奪三振0失点だ。



「6番ピッチャー水宮みずみや君」


「頼むぞアオ」



 青郡あおごおりの最速は144キロだが、120キロ台の夜野よるのに慣れてしまったバッターには、豪速球に見える。水宮みずみやは打ち上げてしまった。



「おーし、おし!」



 フライの捕球はキャッチャーで慣れている。青郡あおごおりは無難にキャッチした。



 次の火星ひぼしは5球目にサードゴロで仕留める。綾倉あやくら監督は流れを引き寄せたと実感した。



(続く)

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