511球目 ワンポイントリリーフの球速が出ない

 宅部やかべさんのツーベースヒットで、番馬ばんばさんと東代とうだいがホームインし、すぐに追いついた。さすが浜甲はまこうの安打製造機!



水宮みずみや君、悪いけど、青郡あおごおり君の時だけマウンドを宅部やかべ君に譲ってくれる?」



 グル監が悪い提案をしてくる。



「えっ? 何ですか?」


青郡あおごおり君は本格派にめっちゃ強く、軟投なんとう派に弱いデータがあるから」


「わっかりました」



 うーん、1人で7回ぐらいまで投げたかったが、データがあるんならしゃあない。宅部やかべさんのワンポイントリリーフを許した。



 その後、真池まいけさんの送りバントが決まるも、津灯つとうはファーストライナー、山科やましなさんはセンターフライに倒れて勝ち越せなかった。



「ピッチャー、水宮みずみや君に替わりまして、宅部やかべ君」


「初登板!」



 物静かな宅部やかべさんが珍しく叫んで、マウンドに登る。投げたストレートは130キロを計測し、色んなカーブはキレッキレだ。



 強打者・青郡あおごおりに対して、外のカーブでカウントを整え、インコースにストレートを投げた。



「ストラックアウト!」



 フィニッシュボールは内角高めインハイに128キロのストレート。あんなゆるいボールをバッターの胸元に投げるなんて、肝が据わってるなぁ。


 宅部やかべさんはちょっぴり笑みを浮かべて、俺にボールを渡した。



(続く)

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