508球目 股間にボールが当たりたくない

 ここは一旦アウトコースを攻めた方がいいんじゃ? でも、東代とうだいはまだインコースを要求する。恐ろしいキャッチャーだ。もう、どうなっても――。



「知らん!」



 千本せんもとはプウウウと叫んで、強打者のようにフルスイングしてきた。快音を残して、打球はアソコへ……。



「んがぁ!」



 俺の男の勲章にボールが直撃して、立てなくなる。ボール、誰か、捕って……。



「うおりゃあああ!」



 番馬ばんばさんが拾って、1塁へ投げてくれた。



「セーフ!」



 これで逆転か。しゃあないね……。



「バックホーム!」



 えっ? 2塁ランナーの友野が鹿脚でホームへ駆ける。真池まいけさんが投げても間に合わない。



「セーフ、セーフ!」



 これが全国優勝校の底力か……。ピッチャー強襲ヒットで2点入るなんて……。



 番馬ばんばさんが意識の薄れる俺をかついで、ベンチへ連れて行ってくれた。冷却スプレー、ああ泣きたいけど、ありがたやありがたや。



(続く)

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