507球目 鹿の脚を封じられない

 友野とものは長打がない。宅部やかべさんによればパワーE査定だ。力強いストレートを低めに投げれば大丈夫。



 初球から打ってきたが、津灯つとうの守備範囲内のゴロだ。



「はいっ!」



 津灯つとう宅部やかべさんに送球して、1塁ランナーはアウト。バッターランナーは――。



「セーフ!」

「っしゃあ!」



 3塁ランナーが還ってきて同点。まぁしゃあない。ここまでのピッチングが上出来すぎた。



「2番ライト千本せんもと君」



 彼女を抑えてチェンジにする。宅部やかべさん査定でパワーF、内野安打〇持ち。内野ゴロにならんよう気をつけよう。



 初球は内角高めインハイのストレート。



「キャッ!」

「ボール」



 これでベースから離れたら攻めやすく、あっ、まだベース寄りだ。根性あるな。



 東代とうだいのサインは内角低めインローのスライダー。下手したら彼女に当たるかも。



「キャアア!」

「ストライクッ!」



 今度はストライクだ。その間に友野が盗塁していた。



「プイイ!」



 ウサギ千本せんもとさんの赤い瞳が光り、禍々まがまがしいオーラが出てきた。インコース攻めでキレちゃったか?



(続く)

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