509球目 ゲーマーとの勝負は避けられない

 分多ぶんたがピッチャーゴロに倒れて、5回表の攻撃は終わった。この2点リードをどう守るか皆が考える中、1人だけ別の方向をむく選手がいた。



 夜野よるのである。彼女はチームの勝負よりも、宅部やかべとゲームで対戦したがっていた。それもピンチの場面にして。



 まず、番馬ばんばの足にワザとボールをぶつけた。



「クソアマァ!」



 番馬ばんばが飛びかかってきたので、彼女はとっさに友野とものの後ろに隠れる。鹿と鬼がにらみ合う。



「グラウンドで暴力ふるう奴は、この角で尻ぃ突き刺すでぇ」


「むうう。そりゃ痛いわな」



 番馬ばんばは角を引っ込めて1塁へ向かう。次の東代とうだいはバントの構え、初球からピッチャー前へ転がした。



 夜野よるのはボールをゆっくり拾って、セカンドへ送球。



「セーフ、セーフ!」



 無死1・2塁のピンチを演出して、宅部やかべと対戦する。



「あっ!」



 ワザと暴投してホームへ走る。そこで、宅部やかべの肩をタッチして、自らの世界へ誘い込んだ。



(続く)

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