505球目 バット飛ばしは危ない

 無死ノーアウト満塁フルベースの最悪な状況で夜野よるのだ。



 内野陣がマウンドに集まり、伝令の千井田ちいださんが走ってきた。



「同点はしゃあないって。ワンアウトずつ取っていくやん」

真池まいけ、お前のせいやぞ。クソエラーしよって」

「ソーリィ、本当に申し訳ない」

「クールダウン、クールダウン。ヨルノはローコース低めを攻めましょう。ディフェンス、お願いしますよ」



 東代とうだいの軽快な口調が、重苦しい雰囲気を吹き飛ばす。味方の守りを信じて、低目に丁寧に投げるぞ。



 初球は外角低めアウトローのストレート。全身の力をボールにこめて投げる。



「ストライクッ!」


「きゃああ」



 彼女のバットが飛んで、俺の足元へ。




「ごめんなさい。拾ってもらえる?」


「あっ、はい」



 俺がバットを拾おうとしたら、津灯つとうがつかんで彼女の元へ持って行った。



(続く)

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