492球目 ポーカーフェイス対決は熱くない

「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」



 青ざめた顔の夜野よるの投手は宅部やかべに質問する。宅部やかべはバットを構えたまま無視する。



「教えてくれないと投げないよ」



 宅部やかべはタメ息を吐いてから答える。



「ストレート」

「わかった。じゃ、ストレート投げるね」



 宅部やかべは予告どおりのストレートを投げるか半信半疑だったが、外角低めアウトローに真っすぐがきたので、三遊間へ流し打った。レフト前ヒットになる。



「キター! 記念すべき初バント!」



 真池まいけはギターを鳴らすようにバット上で指を動かす。



「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」


「バントしやすいボールなら、どれでもOK! カモンベイベー!」


「そう……」



 夜野よるのはハイテンションな真池まいけにドン引きする。



 真池まいけは初球からキッチリとピッチャー前に転がして、送りバントを成功させた。



「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」


「シンカー! 打ったことないから」



 津灯つとうに対しては初球シンカーを投げてきた。低目に入ってストライク。津灯つとうは球筋をしっかり見ていたので、2球目のシンカーを引っぱった。



「アウト!」



 だが、セカンドの友野とものが瞬時に走って捕る。



「アウト!」



 セカンドゴロの間に宅部やかべは3塁に達した。2死3塁のチャンスで迎えるバッターは――。



「4番センター山科やましな君!」



(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る