493球目 女性ファンを敵に回さない

 山科やましなさんが打席に入るやいなや、女子の黄色い声が球場中を包む。



「キャアアアア! 山科やましなさんよぉ」

「打って打ってぇ!」

「もちろん、打つとも!」



 山科やましなさんの瞳はハートマークになっている。女子達の何人かは倒れていそうだ。



「ねぇ。君はストレートかカーブかパームかシンカー、どの球種が好き?」

「そんなボールより、僕は君の方が好きやね」



 山科やましなさんの誘惑によって、女性投手は次々と沈んできた。夜野よるのも少し動揺し、プレートを外してロージンバックを手に取る。



「さぁ、行こう!」



 夜野よるのの右足が上がり、クイックモーションから第1球。山科やましなさんの肩にボールが当たる。



「デッドボール!」

「いててて……」



 山科やましなさんは左肩を抑えて1塁へ向かう。男女川みのりかわさんが冷却スプレーをかける。



「ごっ、ごめんなさい」


「気にせんでええよ」



 山科やましなさんが許しても、女性ファンは全く許さない。



「キィー! 打たせんて卑怯よぉ!」

「クソがぁ!」



 女性ファンの怒号渦巻く中、烏丸からすまさんがケンケンパで打席に入る。



「俺っちはシンカーか、外のストレートが好き!」



 烏丸からすまさんは夜野よるのに聞かれる前に、好きな球種、しかもコースまで指定した。



 初球・2球とも大外れのボール。3球目に外角低めアウトローに沈むシンカーが来て、烏丸からすまさんはライト前へ流し打った。



「やったぁ! ガァガァ!」



 宅部やかべさんがホームインし、あっさり1点先制した。俺達って強い?



(続く)

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