8回裏 ついに甲子園! VSセンバツ王者の埼玉翔出

483球目 行進は簡単じゃない

「選手入場!」



 よく通る女子アナウンサーの声で、全国の代表49校の選手たちが次々と甲子園球場へ入場する。



「兵庫県代表! 私立浜甲はまこう学園」



 いざ俺達も甲子園球場へ!



「チーさん、右手と右足が一緒」


「ホンマやん。って、あれれ?」



 津灯つとうに指摘されても、千井田ちいださんの足は手と一緒に動く。



「あー、こんなんかったるいわぁ」


「ですよねー、番馬ばんばさん」


「ホンマにムダムダやね」



 番馬ばんばさんは子分が入ってから、ますます調子に乗ってる気がする。バッティングの調子も乗ってくれたらいいけど。



 全国の代表選手全員が並んだところで、偉い方々の挨拶がある。



厚岡あつおか創造そうぞうスポーツ強化大臣の挨拶です」


「皆さん、熱くなってますかぁ! 私はとても熱く燃えております! さて、甲子園とは――」



 現役時代は熱血野球選手として活躍していた厚岡あつおか大臣。話に熱が入りすぎて、15分超の長いスピーチとなった。



「続きまして、田中原たなかばら三郎さぶろう高校野球連盟会長の挨拶です」


 ヤギのような白ヒゲを持つ高野連の会長が出てきた。


「えー、選手の皆さん、甲子園の夏が始まりました。皆さんの元気はつらつとしたフェアプレー、楽しみに見させていただきます。あのぉ、私は長く話すのは苦手なので、ここで挨拶を終わらせていただきます」



 何と、高野連会長の挨拶は2分足らずで終わった。選手たちは全力で拍手する。



「優勝旗返還!」



 具志堅ぐしけん高校の主将が、真紅の優勝旗を会長に渡す。百年分の伝統が詰まった優勝旗、うちもほしいなぁ。



「選手宣誓」



 島根県の鷹爪たかづめ高校の主将が壇上に立つ。



「宣誓! 日本の高校野球は世界一高いレベルであります! 我々はそれを誇りに思い、最後まで勝利をあきらめることなく、正々堂々とプレーすることを誓います。島根県代表、鷹爪たかづめ高校主将、吉原よしはら政太まさた



 最後まで勝利をあきらめないってか。いいフレーズだねぇ。



 これから15日間、世界一熱い大会が幕を開ける!!



(続く)

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