481球目 カラオケで本性が隠せない

 尼崎あまがさきのカラオケ店に集まったのは、俺と千井田ちいださんと天塩あまじお埼玉さいたま翔出しょうで友野ともの、小柄な色白の女子、金髪と銀髪の違いだけの双子、ツインテール赤髪の女子だった。



「ど、どうも、埼玉翔出しょうで千本せんもとです」



 小柄な千本せんもとさんは声が小さく、聞き取り辛い。



希望きぼう学園の桃野ももの栄治えいじです。こいつは、弟の」


鉄平てっぺいだ」



 桃野ももの弟は俺と全く目を合わせてくれない。ずっとブスッとしていて機嫌が悪そうだ。兄はニコニコしてるのに、双子でも全然違うな。



浦間うらま千夜子ちよこでっすー。よろピー!」



 ノリが軽い浦間うらまは、すでに自撮り棒を持っている。ギャル100%全開だ。



水宮みずみや君、ウワサは聞いとるよ。太らされたり、ボコ打たれされたりしても投げぬく不屈の魂のピッチャーだってね」


「いやぁ、どうもどうも」



 他にも、相手と入れ替わったり、幽霊に乗っ取られたりしたけどね……。



「いやぁ、まっさか、桃野もものパイ先がファーストで、鉄さんがピッチャーで優勝って驚いたわ」


千夜子ちよこのリードのおかげだしー」


「友野とは2回戦じゃなくて、準決で当たりたかったなぁ」


「ちょっと、ちょっと! あたいらが負ける前提で話せんといてやん!」



 千井田ちいださんが桃野ももの兄にツッコミを入れて、笑いが起きる。



「そんじゃ、歌いに行こうか」



 敵の選手と慣れあうのはアレだけど、性格や弱点がわかるかもしれない。



※※※



 3時間ほど歌えば、各自の歌う特徴が見えてきた。



 友野はひたすらノリノリでアニソンを歌う。声が異常に大きい、耳に響くんだわ。



 千本せんもとさんはYOASOBIの曲を芯の強い声で歌う。音程もバッチリ合っていて凄い。



 桃野ももの兄は髭男やKing Gnuのクソ難しい曲を歌いこなす。時折音程が外れても全く気にしない強心臓だ。


 桃野ももの弟は全く歌おうとせず、兄にマイクを渡されてハモる程度だ。今まで見てきた自己中なピッチャーとは違うらしい。



 浦間うらまさんはきゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeの曲を鼻声で歌う。自らの歌う姿を自撮りし過ぎだろ。あと、スマホがダイヤモンドばりにデコられている。



 天塩あまじお千井田ちいださんは洋楽を洋学をデュエットで歌う。リア充爆発しろ。



 俺は米津よねづ玄師けんしや川崎鷹也たかやの曲を無難に歌った。歌い終えると皆が拍手してくるので、ちょっと恥ずかしい。



 結構楽しかったので、またこのメンバーで集まれたらいいな。



(続く)

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