469球目 セーフティーバントにしたくない

「ファースト!」



 天村あめむらの俊足は刺せない。となれば、ファーストへ送球するのみ。



 ゲームセットになるよう、肩が抜けてもいいぐらい全力で投げた。福口ふくぐちのヘッドスライディング、アウトになれ!



「セーフ、セーフ!」

「バックホーム!」



 はやしは慌てて3塁へ戻る。あわや同点になるところだ。危ねぇな。



「5番セカンド上村うえむら君」



 一打サヨナラ負けの場面だ。取塚とりつかさんがいたら、すぐにマウンド代わりたいよな。俺はロージンバックに手を取る。



「頑張れ、頑張れ、浜甲はまこう!」


水宮みずみや負けるなぁ!」



 皆の声援が、最後のひと踏ん張りの力を与えてくれる。こいつをアウトにすれば甲子園出場なんだ。



「あたし達が守るよぉ!」


「僕が華麗に捕ってみせよう!」



 俺は一呼吸置いて、外角低めアウトローにスライダーを投げた。上村は初球から打ってきた。ライト線、ヒットになるなぁ!



(甲子園出場まであと1人)


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