467球目 すんなりゲームセットにならない

 延長13回裏のマウンドは俺が立つ。無死1・2塁のピンチから始まるが、今いるランナー全員ホームインしても逆転されない。かなり気が楽だ。



「8番レフト鈴村すずむら君」



 俊足のこいつを抑えれば、勝利にグッと近づく。



 ゴロを打たせないよう、高目にボールを投げる。



 内角高めのスライダー、ワンストライク。


 外角高めのストレート、ツーストライク。


 3球目はワンバウンドになるチェンジアップ、こんな低いボールを打ってきた。



火星ひぼし!」



 火星ひぼしが飛び出して捕り、俺は1塁へ走る。間に合うか?



「セーフ、セーフ!」



 クソ―、また足にやられた。



「焦らずに、1つずつアウト取ってこー!」



 津灯つとうキャプテンの言う通り、落ち着いて目の前のアウトに集中すれば、こっちが勝てる。



「9番ライト川田かわた君に替わりまして、依野よりの君」



 今度は低めに投げる。ストレートとスライダーでカウントを整え、チェンジアップで打ち取る配球だった。



 しかし、チェンジアップが2球連続で外れ、フルカウントになる。



 依野よりのが引っ張ってきたが、サードへの平凡なゴロ。番馬ばんばさんが3塁を踏んでファーストへ送球。1点入ったが、2アウトなら御の字だ。



(甲子園出場まであと2人)

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