466球目 バントでホームランはありえない

 センターはフェンス際まで走り、ついにフェンスにピッタリつく。打球はまだ落ちてこない。そのままバックスクリーンに入った。



入った? ということは――。



「ホームラン、ホームランやぁ!」



 今までの苦戦が嘘のようなプッシュバントの満塁ホームラングランドスラム



 球場全体が湧いた。俺達は思い思いのポーズで喜びを表した。



 打った当の本人は泣きながら、ベース1周する。準決勝・決勝と三振しまくりの番馬さんが、最後の最後で大仕事をやってくれた。



 この4点リードを守り切れば甲子園出場、野球部存続だ。テンション上がるなぁー。



※※※



 黄崎きざき水宮みずみや宅部やかべを連続三振に抑えてベンチへ戻る。



 彼は13回表の4点を見て、こみ上げてくる涙を飲もうとする。村下むらした監督は彼の隣に座って、こう言う。



「まだゲームセットじゃない。最後まであきらめるな」



 神戸ポートタウン大付属の攻撃も無死1・2塁からスタートする。ゲームセットになるまで、どっちが勝つかわからない。



(続く)

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