465球目 満塁のセーフティーバントは危ない

 グル監は番馬ばんばさんに面と向かってこう言う。



「どうやったら打てると思う?」


「えっ? ハァ……」



 番馬ばんばさんは答えに詰まる。そりゃ、こんな大一番で言われることじゃねぇよな。



「えー、ボールがバットに当たったらホームラン!」


「でも、今のスイングじゃ当たらへんよね?」


「うううううう、ぐぬぅ……」



 ストレートに滅法めっぽう強い番馬ばんばさんでも、黄崎きざきの速球に振り遅れる。黄崎きざきからヒットを打ったのが俺・宅部やかべさん・津灯つとうだけだから、しゃあないと思うけど。



「だから、バットに確実に当たるよう、セーフティーバントするのはどうかしら?」


「バ、バント……」


「か、監督。満塁でセーフティーバントはリスク大きいっスよ。番馬ばんばさんならプッシュバントがいいと思いますけど」



 俺は慌てて口を挟む。怪力で外野手の手前に落ちるヒットになるかもだし。



「なるほど。じゃあ、それでいきましょ。番馬ばんば君、プッシュバントね!」

「ウッス!」



 番馬ばんばさんは元気よく返事して打席に戻る。



「さぁ、行こーかい。くらえ、サンシャイン・アロー!」



 ボールが太陽のごとくまぶししく光る。番馬ばんばさんはバントの構えで、シュート回転するボールにくらいつく。



「おらああああああ!」



 プッシュバントの打球は外野へ飛んでいった。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る