462球目 暑いマウンドに1秒もいたくない

※今回は宅部やかべカオル視点です


 一切休むことを許されないピッチャーが、こんなクソ暑いマウンドに立たされるなんて、地獄すぎるわ。さっさと終わらせてベンチで涼みたいから、東代とうだいに3球チェンジを提案してみた。



サブファイナル準決勝のミスター・ミズミヤのピッチングをやりたいということですか?」


「イエス。30球も投げたら、俺のスタミナもたんから」


「バット、ミスター・ミズミヤのボールはパワーがあって外野フライに出来ましたが、ミスター・ヤカベのボールはライト軽いです。ホームランのリスクがあります」



 軽い球だと? まぁ、事実やから言い返さんけど。俺も水宮みずみやみたいなスピードボールが投げられたらなぁ。



「1イニングに使える超能力、あと2回残っとるやろ。烏丸からすまさんに2つとらせて、あと1つはこっちで何とかするってのは?」


「OK。ミネギシとフクグチはライトフライでアウトにしましょう」



 峰岸みねぎし福口ふくぐちは右打者なので、ライトへ流しやすいよう、アウトコースにストレートを投げた。



 峰岸みねぎしのホームラン性の打球、福口ふくぐちのツーベースヒット級の打球ともに烏丸からすまさんがはばたいて捕った。思い通りにいって、あと1人だ。



 上村うえむらには徹底的に外のカーブを投げる。カウント2-2になってもスラーブ(スライダーに近いカーブ)を外、あっ、内側に入った。



 上村が引っ張ってきたが、番馬ばんばさんの伸ばした腕の先のグローブに収まった。



「アウト! チェンジ!」



 灼熱しゃくねつのマウンドから解放された。ああ、早く帰ってゲームしたいわ。



「ナイスピッチン、宅部やかべさん!」


宅部やかべさんのコントロール、さすがですわ」



 炎天下の野球は大嫌いやけど、皆から褒められるのは悪くない。



(続く)

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