461球目 チャンスをピンチに変えたくない

「たああああああ!」



 センターへ抜けると思われた打球を、黄崎きざきがジャンプ1番で捕った。



「こっちや!」



 彼は空中でファーストへ向かって投げる。ファーストの鈴村すずむらは懸命に手を伸ばして捕った。



「アウト!」



 1塁走者の津灯つとうは戻りえず。一瞬にしてスリーアウトチェンジ。



 浜甲はまこう学園は勝ち越しのチャンスを逃し、暗い面持ちでベンチへ戻る。



「ピッチャーは宅部やかべ君、本賀ほんがさんはレフトを守って」



 本賀ほんがは「あっ、はい」と、頼りない返事をする。公式戦の守備は初めてなので、不安な気持ちで一杯だった。



 宅部やかべはマウンドに上がって、帽子をうちわ替わりにあおぐ。全く冷えず、むしろ暑くて体が解けそうになった。彼はマウンドに来た東代とうだいにこう言う。



「3球チェンジって可能か?」



(続く)

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