460球目 詳細な指示は出さない

 神戸ポートタウン大付属は1死満塁のピンチを迎え、伝令に鮎川あゆかわを送る。



黄崎きざき、監督からの伝言や。キャッチャーの構えたところへ腕を振って投げろ」


「そんなんいつもやっとるし。何を今さら」



 黄崎きざきはヘラヘラしながら腕を回す。



友永ともながにはこう言っとったで」



 鮎川あゆかわは声をひそめて友永に耳打ちする。



「ほとんどど真ん中付近に構えとけって。黄崎きざきに余計なこと考えさすな」


「わかった」



 ノーコン投手はデータではなく、根性で動かす。村下むらした監督の人生経験から得た結論だ。



 友永は真ん中低目にミットを構える。黄崎きざきは指示通りに腕を振って、豪速球を投げた。



 高めに浮いたストレートを本賀ほんがのバットがとらえる。打球はピッチャーの頭上を越えてセンターへ――。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る