463球目 タイブレークを無駄にしない

「延長13回になりましたので、ここからタイブレーク制になります」



 夏の予選では、延長13回から無死1・2塁から始まるタイブレーク制が導入されている。2人のランナーは自由に選べず、前の回の最後のバッターの後ろ2人になる。



 今のうちの場合、前の回は6番の本賀さんで終わってるから、7番の火星ひぼしが2塁ランナー、8番の烏丸からすまさんが1塁ランナーとなる。



「9番キャッチャー東代とうだい君」



 下手に打つとゲッツーがあるから、グル監の指示は送りバント。後ろに山科やましなさん・番馬ばんばさん・俺がいるから、手堅くいかないとね。



 東代とうだいは引きつった顔でバントし、ピッチャー前に転がした。2人が次の塁に進んで送りバント成功だ。



「1番センター山科やましな君」



 ここでサイクルヒッターのご登場だ。今日は6打数1安打3三振だが、女子達の声援でパワーアップしてくれるはず!



「いやああああ、打って山科やましなさーん!」

「ホームラン、ホームラン、やーましな!」


「プレイ」


 女子達の声援で審判の声が聞こえない。ここはコンサート会場じゃねぇぞ。おや、キャッチャーが立ち上がって構えている。ということは――。



「ウギギギギ。俺様と勝負ってかぁー!」



 番馬ばんばさんが血管がちぎれそうなぐらい赤くなっている。山科やましなさん敬遠で、本日ノーヒットの番馬ばんばさん勝負できたか……。



(続く)

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