458球目 守護神が投げられない

 12回表の攻撃、番馬ばんばさんが三振に倒れ、俺に打順が回ってくる。



「3番ピッチャー水宮みずみや君」



 サングラスをかけて、サンシャイン・アロー対策はバッチリだ。



 高めに甘い球が来たら打とうと思ったが、ストライクが入らないんじゃどうしようもない。四球フォアボールで出塁する。



 黄崎きざきの左足が少し浮き上がったと同時に2塁へゴー。キャッチャーが投げても間に合わない、鮮やかな盗塁を決めた。



 ここまでノーヒットの宅部やかべさんが、黄崎きざきのストレートを流し打って、ライト前へ運んだ。これで1死1・3塁。



 ポートタウンは津灯つとうを敬遠し、満塁策を取った。1死満塁フルべースのチャンスで、グル監が一世一代の大勝負に出た。



「6番ライト取塚とりつか君に替わりまして、ピンチヒッター本賀ほんが君」



 絶対的守護神を下げての代打。俺が監督なら、こんな大胆な采配は出来ん。



 本賀ほんがさんはバットを軽く振って、打席にゆっくり入る。



「よろしくお願いします!」



 球審に対してうやうやしくおじぎ。これぞ高校野球だね。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る