457球目 最後まで打球に目をそらさない

「アウトや、アウトやでぇ、審判!」



 番馬ばんばさんが三塁審判にアピールしている。タッチアップが早かった? いや、ほぼ同時だったと思うけど……。



 東代とうだい番馬ばんばさんに送球。番馬ばんばさんがボールの入ったグローブで3塁ベースをタッチすると――。



「アウト、アウト! チェンジ!」


「なっ、何だと?」


「ラッキー!」



 サヨナラ負けがなくなった。烏丸からすまさんが捕ったと同時に走ったように見えたけどなぁ。



「責任審判の川越かわごえです。ただいまのプレイにつきまして、説明します。あちらをご覧ください」



 スコアボードにリプレイ映像が映し出される。プロ野球チームが使う球場ならではの演出だ。



 烏丸からすまさんが左腕を伸ばしてボールを、あっ、捕ってない!? ボールをつかむフリをして、実は口ばしでキャッチしていたのだ。



「完全捕球は烏丸からすま選手の口ばしで挟んだ時と判断し、それ以前にスタートを切っていた川田かわた選手はタッチアップが早いということになります。よって、守備側のアピールにより、川田選手はアウトです」



 すっかり騙された。俺はボールをグローブで捕るものとばかり思っていたから、烏丸からすまさんが手を伸ばした瞬間、もう捕ったと確信していた。



 これで首の皮1枚つながった。12回表は俺に打順が回る。勝ち越すぞぉ!



(続く)


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