445球目 ランナーと正面衝突したくない

 増川ましかわのピッチングはますます冴えている。速球に強い津灯つとうを、外角低めアウトローの146キロストレートで空振り三振。7回に東代とうだいのツーベースヒットが出て本当に良かったな……。



 次の千井田ちいださんはインコースのスライダーを打ちに行くも、ボテボテのファーストゴロ。彼女は懸命に1塁へ走る。



「危ない!」



 俺が叫ぶと同時に、千井田ちいださんとカバーに入った増川ましかわがぶつかった。彼女は頭から倒れ、彼は右肩を強く打った。



千井田ちいださん、大丈夫ですか?」


「平気やん、平気」



 千井田ちいださんの額から血がタラリと落ちる。



増川ましかわ、大丈夫かぁ?」


「ああ。ちょっと痛いけど、大丈夫」



 相手投手も少し顔をゆがめているが、大丈夫そうだ。お互い大きなケガじゃなくて良かったぁ。



「ピッチャー増川ましかわ君に替わりまして鮎川あゆかわ君」



 ポートタウンは鮎川あゆかわを再びマウンドに送ってきた。増川ましかわはレフトでお休みか。



「レフト鮎川あゆかわ君に替わりまして大土おおと君」



 おや、増川ましかわはベンチか。向こうはまだ9人ぐらい残ってるもんなぁ、羨ましい。うちは取塚とりつかさんと本賀ほんがさん2人だけだよ。



 火星ひぼしがセンターフライに打ち取られてチェンジ。とうとう最終回だ。



(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る